多くの国連加盟国が支持する「核兵器禁止条約」交渉開始決議案に日本政府は賛同しない方針だ。唯一の被爆国としての国際的な使命、核廃絶を求める国民世論を裏切るものであり、容認できない。
政府は国会で説明し、広く国民の議論を仰ぐべきだ。
オーストリアなどが提出した決議案は「核兵器を禁止し、廃絶につながる核兵器禁止条約の交渉を2017年から開始する」というものだ。
国民投票にかければ圧倒的多数の賛成を得られるはずだ。
決議案に核兵器を持たない100カ国以上が賛同している。核廃絶の声は国際的潮流だ。しかし米国など核保有国が反対し、日本政府は米国に追従している。
日米両政府は核兵器が戦争を抑止するという倒錯した「核抑止論」に立ち、日本政府は米国の「核の傘」が日本を守るという安全保障政策に固執している。
政府は4月に「憲法9条は一切の核兵器保有と使用を禁止しているわけではない」とする答弁書を閣議決定した。安倍晋三首相はかつて「小型の原子爆弾を保有することは問題ない」と発言している。
安倍政権は「武器輸出三原則」を改悪して武器輸出を解禁し、安保法制で自衛隊の海外派兵に道を開いた。防衛予算は5兆円を突破し、歯止めなき膨張を続けている。
片やオバマ米政権は「核実験の自制を求める決議案」を国連で可決させる一方、今後30年間で1兆ドル(約100兆円)を投じて核兵器を近代化する計画を進めている。自国の核兵器を近代化しながら他国に「核実験の自制」を求め、核廃絶に背を向ける二枚舌外交を続けているのである。
日米の核保有容認、核軍拡路線の中に「核兵器禁止条約」への不賛同が位置付けられる。
北朝鮮の度重なる核ミサイル実験に対し、韓国与党内に核武装論、先制攻撃論が強まっている。在韓米軍への「戦術核再配備」を求める声もある。
北朝鮮の核開発に核兵器で対抗する。韓国の危険な兆候に、同盟国の日米がどう応じるか、注視する必要がある。
米軍は日本復帰前の沖縄に核兵器を貯蔵していた。返還交渉の中で、有事の際の再持ち込みの密約が交わされたことが米国防総省文書に記されている。核兵器の脅威は沖縄にとって過去のものではない。核廃絶の声を沖縄から発信したい。