辞任だけでは済まない。稲田朋美防衛相は即刻辞職し、国会から去るべきだ。
南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報を陸上自衛隊が隠蔽(いんぺい)していた問題に、稲田氏が加担していたことが分かった。稲田氏は2月の防衛省最高幹部の緊急会議で、保管の事実を非公表とするとの方針を幹部から伝えられ、了承していた。その2日前にも、陸自側から日報の電子データが保管されていた事実などの報告を受けていた。
稲田氏は「隠蔽を了承したとか、非公表を了承したとかいう事実は全くない」と否定している。だが、複数の政府関係者が稲田氏が了承した事実を明らかにしている。言い逃れは許されない。
緊急会議では、陸自の電子データは隊員個人が収集したもので、公文書に当たらないなどとした上で「事実を公表する必要はない」との方針を決定した。本来なら稲田氏は日報隠しに異を唱え、正さねばならない。だが、防衛相の果たすべき役割、国民に対する責任を放棄したのである。
稲田氏は国会審議で、陸自では発見できなかったとの答弁を繰り返していた。非公表とすることで、国会での追及を回避する思惑があったはずだ。稲田氏自身にも根深い隠蔽体質があったと断じるほかない。
信じ難いのはその後の国会答弁である。3月の衆院安全保障委員会で、稲田氏は一連の隠蔽行為の報告の有無について「報告はされなかったということだ」と否定し「徹底的に調査し、隠蔽体質があれば私の責任で改善したい」と述べた。
だが、稲田氏は1カ月前に2回にわたり報告を受け、隠蔽を容認していたのである。
防衛省は、稲田氏が昨年12月に電子データの再捜索を指示し、統幕内で見つかったと説明してきた。稲田氏の責任回避を意図した印象操作だったことは明らかだ。
安倍政権は「稲田氏が捜すように指示した結果、見つかった」とし、稲田氏の指導力による問題解決を強調することで収拾を図ろうとした。この「筋書き」は欺瞞(ぎまん)に満ちている。稲田氏は何ら指導力を発揮していなかったどころか、日報隠しに関わったのである。
稲田氏はこれまでも、大臣としての資質が疑われる言動を繰り返してきた。その最たるものが東京都議選応援演説である。自民党候補の集会で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と、自衛隊を政治利用した。そして今回判明した隠蔽了承である。稲田氏には議員たる資格は、もはやない。
安倍晋三首相の任命責任は重大だ。内閣改造まで稲田氏を防衛相に居座らせることは許されない。だが、菅義偉官房長官は「今後とも誠実に職務に当たってほしい」と述べている。安倍政権に自浄能力はない。衆院を解散し、国民に信を問うべきだ。