感情的で先鋭化した威嚇の応酬は直ちにやめた方がいい。北朝鮮と米国のトップが理性を欠いた言葉で、世界に緊張をもたらしている。
国際社会は冷静に対処し、両国を対話に導く方策を探るべきだ。日本も、不安をあおる言動を続ける米朝に働き掛けて、軍事的緊張を解く役割が求められる。
今回の事の発端は、北朝鮮が小型核弾頭の開発に成功し既に60発を保有しているとの米情報当局の分析だった。
トランプ米大統領は「北朝鮮は世界が見たこともない炎と怒りに見舞われることになる」と挑発した。
これを受け北朝鮮は新型中距離弾道ミサイル「火星12」4発をグアム沖30~40キロの海上に同時に撃ち込む案を検討していると表明。発射すれば島根、広島、高知3県の上空を通過すると予告した。
トランプ氏は「グアムや米領土、同盟国に何かすれば、すぐに後悔することになる」と激しく警告した。
そもそもは北朝鮮の金正恩政権が国連の安保理決議を無視して核・ミサイル開発を続けていることが元凶だ。7月には大陸間弾道ミサイル(ICBM)2発を続けざまに撃った。米国を対話に引き出すために脅しを掛ける瀬戸際外交だろうが、許されない。21日から始まる米韓合同演習へのけん制との見方もある。
一方のトランプ氏にも、挑発に乗らず、米大統領として理性ある慎重な言動を強く求めたい。戦争も辞さないとの攻撃的な発言は慎むべきだ。
日本は中四国に航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を展開した。小野寺五典防衛相は、グアムが攻撃された場合、安全保障関連法に基づき、集団的自衛権が行使可能な存立危機事態の認定もあり得ると言及した。
しかし、日本が攻撃されてもいないのに集団的自衛権を行使したり、ミサイルを迎撃したりすれば、日本にも矛先が向く。米国の戦争に付き合わされるのは言語道断だ。国民の命を危険にさらす集団的自衛権は憲法違反でもある。
イージス艦とPAC3という二段構えの迎撃でミサイルを撃ち落とすのは不可能との指摘が専門家からあり、命中精度が疑問視されている。
日本がやるべきは、米朝の接触を促すなど対話外交を模索することだ。決して戦争の道を選んではいけない。
米朝の不毛な神経戦が続き制御不能な事態になれば、偶発的衝突の恐れも出てくる。米軍基地が集中する沖縄にとって影響は深刻だ。
フランスやドイツ、ロシア、中国などは軍事衝突を避けるよう求めている。米政権でもティラーソン国務長官が外交解決を目指す方針を強調し、軍事一辺倒でない点はわずかに希望が見える。
今後は国際社会を挙げた取り組みが不可欠だ。日本や韓国、中国、ロシアなど関係国が連携し、対話につなげる外交努力を重ねたい。