弾道ミサイル発射を繰り返し、世界の平和を脅かす道をひたすら歩むことに何ら正当性はなく、その権利もない。北朝鮮はそのことを深く認識すべきである。朝鮮半島情勢の緊張を高める愚行を重ねることはやめるべきだ。
北朝鮮の発射した弾道ミサイル1発が北海道上空を通過し、太平洋上に落下した。日本国民を不安に陥れる暴挙であり、強く抗議する。
日本上空を北朝鮮のミサイルが通過したのは5回目である。2016年2月には「人工衛星打ち上げ」と称して長距離弾道ミサイルを発射し、先島上空を通過している。
防衛省は、今回発射されたのは最大射程5千キロの新型中距離弾道ミサイル「火星12」とみている。日本の南から北までが、北朝鮮のミサイルの脅威にさらされていることになる。
ミサイル発射によって北海道などで、休校や始業遅れが相次いだ。新幹線やJR在来線、私鉄の一部路線が運転を一時的に見合わせるなどしてダイヤが乱れ、利用者に影響が出た。全くもって言語道断な話である。
北朝鮮の団体「朝鮮平和擁護全国民族委員会」は今年6月、報道官声明を発表し、日本政府が国際会議で北朝鮮の弾道ミサイル発射を批判していることなどを非難し「今のように日本が不届きに振る舞うなら、有事に米国より先に日本列島が丸ごと焦土になり得る」と警告してもいた。
許し難い脅しである。ただし、菅義偉官房長官が今回のミサイル発射を受けて「冷静に平常通りの生活を送ってほしい」と呼び掛けたように、過敏に反応する必要は全くない。敵視はさらなる緊張を生みかねない。自重する必要がある。
疑問なのは日米首脳の対応だ。安倍晋三首相はトランプ米大統領と電話で協議し、対話の時ではないとして、北朝鮮に、さらに圧力を強めていくことで一致した。
確かに、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が国際社会の非難に耳を貸すことは現時点では想像し難い。だからといって、不毛の挑発行為を繰り返す北朝鮮の土俵にあがることは得策ではない。
圧力一辺倒によって、これまで何ら成果が出ていないことからも、北朝鮮との対話を模索することを放棄してはならない。
あらゆる機会を通して北朝鮮に自制を促すことが今、求められている。危機を回避することを最優先に取り組むべきである。国際社会は一致協力して、北朝鮮が危険な道から引き返すよう取り組みを強化してほしい。
ミサイルの脅しによって自らの主張を押し通す姿勢は、平和を希求すべき国家としてあるまじき姿である。世界で孤立することは、北朝鮮にとっても不幸である。核やミサイルを廃棄し、国を自滅させる誤った道から今こそ引き返す時だ。