<社説>県の地位協定改定案 政府が断る理由はない

 不平等な協定を見直すことに躊躇(ちゅうちょ)は要らない。主権国家の自覚があるならば、政府が断る理由はないはずだ。

 翁長雄志知事が防衛省や外務省、在日米国大使館などに、県が17年ぶりに作成した日米地位協定の改定案を提出した。
 昨年12月の名護市安部沿岸へのオスプレイ墜落事故で日本側が捜査できなかったことなどを踏まえ、米軍機の事故時に日本側が捜査し、財産を差し押さえられることや、現場統制を主導できるようにする内容などを盛り込んだ。
 本来ならば、県が要請するまでもなく、政府が地位協定の改定案を国民に示すべきである。にもかかわらず1960年の地位協定締結以来、一度も改定されていないのである。政府の対米追従姿勢の結果と言うほかない。
 とりわけ、沖縄がその影響を受けている。後を絶たない米軍人・軍属による事件事故によって県民は常に危険にさらされている。国土面積の約0・6%の沖縄に、在日米軍専用施設の約70・38%が集中していることに加え、地位協定の存在そのものが県民の重圧になっているのである。
 安部沿岸でのオスプレイ墜落事故では、日本側が捜査を申し入れても米軍は無視した。報道陣には正当な理由もなく退去を求めた。
 民間地域であるにもかかわらず、事故を起こした当事者であるにもかかわらずである。米軍が思うままに振る舞うことを認めているのが、地位協定である。
 主権を侵されているとの認識が政府にあるのか疑わしい。独立国の誇りを捨て米国を優先することで生じた歪(ひず)みが、県民の平穏な暮らしを脅かし続けていることを真摯(しんし)に受け止めるべきである。
 地位協定は米軍人・軍属を特権的に保護し、公正な刑事訴追も妨げている。事件事故の補償の面でも県民・国民に不利益を強いている。
 米軍人・軍属による公務中の事件事故は、日米両政府が賠償を負担する。だが、公務外の場合は加害者本人の責任とされ、被害者が泣き寝入りする状況が続いている。政府はこのような状況をいつまで放置するつもりか。早急に改めるべきである。
 県の改定案は無理難題を突き付けているわけではない。イタリアでは国内の全米軍基地は、イタリア軍司令官の下に置かれている。米軍機事故の検証もイタリア側が主導権を持って当たる。これが主権国家のあるべき姿だ。
 本来なら米軍人・軍属の特権的な取り扱いを認める地位協定は破棄すべきものだ。それができないのならば、米軍や軍人・軍属の行動を強く規制する内容に改めるべきだ。
 沖縄の負担軽減は政府の約束である。地位協定改定と併せ、基地の整理縮小に名を借りた基地機能強化をやめない限り、約束は実現できない。政府はそのことを深く認識し、対応すべきである。