<社説>首相、衆院解散方針 疑惑隠しで大義なし


この記事を書いた人 琉球新報社

 森友、加計学園の疑惑隠しの大義なき解散と言われても仕方ない。

 安倍晋三首相が28日召集の臨時国会冒頭にも衆院を解散する意向を固め、与党幹部に伝えた。「10月10日公示、22日投開票」を軸に、最終判断する。
 本来なら憲法審査会で出席した憲法学者全員が違憲と断じた安保関連法、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」法など、この国の形を大きく変える重要法案の是非を問うために解散すべきだった。
 首相が解散に傾いた背景には、森友、加計学園問題で急落した内閣支持率が8月の内閣改造を経て回復傾向に転じたことがあるとされる。
 臨時国会が始まれば野党が真相究明を求め追及を強めることは必至だ。森友学園の国有地取得に関する会計検査院の調査報告や、加計学園の認可判断が10月下旬にも出る見通しであるため、問題が大きくなる前に解散した方がいいと判断したようだ。
 野党民進党も離党やスキャンダルで混乱し支持率回復に至っていない。今なら小池百合子東京都知事の「小池新党」の選挙準備が整わないという思惑も働いているようだ。
 首相は6月中旬までの通常国会で野党に森友、加計問題を追及されると、「共謀罪」法を参院法務委員会の採決を省いて「中間報告」と呼ばれる禁じ手を使って本会議の採決を強行して、会期末に閉会した。
 野党が求めてきた臨時国会召集を3カ月も拒み続けてきた。臨時国会の冒頭で解散となれば、疑惑追及の場が閉ざされてしまう。まさに党利党略ではないか。
 首相が「仕事人内閣」と名付けた内閣は、まだ結果を出していない。
 北朝鮮による6回目の核実験や弾道ミサイル発射の強行により朝鮮半島情勢が緊張する中で、政治の空白を招く。安倍政権は危機管理能力の高さをアピールしてきたはずだ。それでも解散する大義は何か。
 一方、沖縄にとっては引き続き、辺野古新基地建設の是非が主要な争点になる。
 2014年の衆院選は、米軍普天間飛行場の県内移設に反対し、翁長雄志知事を誕生させた「オール沖縄」勢力が県内4選挙区全てを制した。
 これに対し、県外移設の公約を破り、辺野古移設を認めた自民党議員は全員、選挙区で落選した。全国では自民が圧勝する中で、沖縄の民意が示された。しかし、小選挙区で落選した議員が全員、比例で救済され、復活当選した。現行選挙制度の欠点が浮き彫りになった。
 16年の参院選沖縄選挙区で、無所属新人で元宜野湾市長の伊波洋一氏が初当選した。新基地建設反対を掲げての圧勝だった。
 選挙は民主主義の根幹だ。
 沖縄の民意を無視し、新基地建設を強行する安倍政権が改めて問われる。