<社説>米軍機騒音4割増 政府は米国追従やめよ


この記事を書いた人 琉球新報社

 米軍の自由な訓練を認め、止めようともしない政府は猛省すべきである。国民に対して果たすべき役割を考え、着実に実行すべきだ。

 米軍ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)のある名護市久志、宜野座村城原、東村高江、伊江村西崎で60デシベル以上の騒音回数の合計が、2016年度は1万8934回に上ったことが沖縄防衛局と名護市の調査で分かった。
 住民によると、米軍機は昼夜関係なく訓練している。60デシベルは走行中の自動車内に相当し、自然状態が静かな夜間は昼間に比べてうるさく感じるとされる。それが14年度よりも約4割、5296回も増えているのだ。本島北部と伊江島での米軍機訓練が激化していることの何よりの証しだ。断じて容認できない。
 米軍機が騒音をまき散らす地域には住民が生活し、学校で学ぶ子どもたちがいる。静かな環境で暮らし、学ぶ権利が踏みにじられ続ける状況を放置する日米両政府に強く抗議し、早急な是正を求める。
 米軍は宜野座、東、伊江の3村を結んだ三角形を中心に訓練を頻繁に実施している。最も騒音回数の多かった4地点の測定データを分析した結果、宜野座村城原では90デシベル以上の騒音が14年度の103回から16年度は316回と約3倍になった。
 伊江村西崎では90デシベル以上の騒音が13年度157回、15年度234回だった。16年度は148回に減少した。だが、減ればいいというものでは決してない。
 90デシベルは騒々しい工場内のうるささに相当する。米軍機さえ飛ばなければ、住民が工場内にいるような状況に置かれることはまずないのである。
 高江小学校のある東村高江区牛道は、より騒音の増加が激しい。13年度の918回から16年度には6887回と約7・5倍に激増している。
 15年1月、高江集落に近い米軍北部訓練場のN4地区のヘリパッド運用が始まった。騒音激増はその影響をもろに受けたとみて間違いない。今年7月にはN1、H地区の運用が始まっており、さらなる騒音増加が懸念される。
 16年12月の北部訓練場過半の返還を記念した式典で、菅義偉官房長官は「今回の返還は本土復帰後最大の返還であり、沖縄の米軍施設の約2割が返還され、沖縄の負担軽減に大きく寄与する」と強調した。事実に反する。発言を撤回すべきである。
 政府が取り組んでいるのは米軍基地の機能強化であり、沖縄の負担軽減などでは断じてない。米軍機騒音の増加からもそれは明らかである。政府は沖縄の負担増に直結する米国追従を改めるべきだ。
 米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸機MV22オスプレイをはじめとする米軍機は、県内全域を飛び回って訓練している。騒音被害は県内全域に広がっているのである。このような異常な状況を放置することは許されない。