第48回衆院選が10日公示され、22日の投開票に向けた選挙戦に入る。
安倍政権の継続に国民の信任を求める自民、公明両党。「改革保守」を掲げ、政権交代を訴える小池百合子東京都知事率いる希望の党と日本維新の会。安倍政権を批判し、憲法に基づく政治を主張する立憲民主、共産、社民など。政権選択を巡って「3極」が競う構図の選挙だ。
与野党で区分けすれば、自公とその他の政党ということになるが、希望と維新は憲法改正、安全保障政策で自民党との違いは小さい。国の基本に関わる問題を軸にすると「総保守」対「リベラル」の2極の争いだ。「安倍協力勢力」対「反安倍」という構図ともいえる。有権者が投票先を判断する際の一つの軸になり得る。
今回の衆院選は日本国憲法の施行から70年の節目の年に実施される。そして改正論議の重大な岐路となる。
自民党は改憲に強い意欲を示す安倍首相の下、第2次政権での国政選挙では初めて公約の柱に改憲を明記した。希望の党は「改憲勢力」であることを明言している。立憲民主、共産、社民の3党は改憲に反対の立場だ。
一つの焦点は憲法改正に前向きな勢力が国会の改憲発議に必要な「3分の2以上」の議席を維持するのかだ。選挙結果は改憲論議の行方を大きく左右する。各候補者は将来像を描く憲法論議にどう向き合うのかを明確に打ち出すべきだ。
もう一つ問われるべき重要な焦点は、5年に及ぼうとしている「安倍政治」の是非だ。安倍首相は安全保障関連法など、前回の2014年衆院選で信を問わなかった重要政策の法律を次々と成立させた。さらに学校法人「森友学園」と「加計学園」を巡る問題では説明責任を十分に果たさなかった。「安倍政治」をこれからも選択するかの重要な選挙となる。
沖縄にとって最も重要な争点がある。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設の是非だ。14年の県知事選と衆院選沖縄選挙区、16年の参院選の沖縄選挙区はいずれも辺野古移設反対を公約に掲げた候補が当選した。しかし政府は基地建設を強行している。沖縄の民意を再び示す機会となる。
今回の解散も前回と同じく民進党の混迷、準備不足の虚を突く形となった。自らに都合が悪いことの説明はせず、相手にとって好ましくない時機を見て勝負に出る。「国難」を掲げるが、大義なき党利党略解散というほかない。
希望の党への民進党の一部による「身売り合流」など、めまぐるしい政治状況で混乱もみられる。その中でも有権者一人一人は、国政に送る最もふさわしい候補者と勢力を拡大すべき政党を十分に吟味する必要がある。自らの判断基準で候補者の公約を見極め、大切な1票を投じたい。