やはり選挙向けのポーズにすぎなかったのか。そう思わざるを得ない政府の弱腰がまた露呈した。
東村高江に米軍普天間飛行場所属の大型輸送ヘリコプターCH53Eが不時着し炎上した事故で、防衛省は米軍の同型
機飛行再開の判断を追認した。
当初は「事故原因と安全が確認されるまで運用停止が必要だ」と飛行再開に強く反対していたが、米軍の説明を受けあっさりと容認に転じた。
米軍の説明はこうだ。不時着の原因となった火災発生の理由は不明のままだが、今回は「固有」の事故である。機体の構造上の不具合に起因する火災だと判断する材料は初期調査では見いだせなかった-との言い分だ。
詳細な原因も突き止め切れていないのに、事故機固有の問題と決め付けるのは早計ではないか。
日本政府も、飛行再開を急ぎたいがための米軍の釈明をうのみにしてはいないか。
衆院選公示翌日の事故とあって、今回、政府は珍しく迅速に動いた。事故当日に防衛省と外務省が米当局に「強い申し入れ」をした。小野寺五典防衛相は在日米軍副司令官を呼び、原因究明までの同型機の運用停止を求めた。さらに、自衛隊の同型機のパイロットや整備員を現場に派遣し調査に当たらせた。
従来より踏み込んだ対応に映るが、米軍への「圧力」にはならなかった。一国の大臣の要請にもかかわらず、米軍は無視し早々に「運用停止は96時間」と期限を切った。
飛行再開に当たって、小野寺防衛相は「在沖海兵隊が一方的に発表したことは極めて遺憾だ」と異例の強い非難をした。だが、これも選挙向けだったのか、実際に直接抗議することはなかった。
23日にはフィリピンでマティス米国防長官と会談したが、ここでも抗議せず、絶好の機会を自ら捨てた。米国にモノを言えない属国ぶりをうかがわせる場面だった。
今回の追認でも、小野寺防衛相は「自衛隊の知見に照らし、米軍が合理的な措置を取ったと判断した」とお墨付きを与えた。
日米地位協定の壁もあり、そもそも日本は事故機の捜査さえもできていない。派遣した自衛隊員も米軍が許す範囲での調査にとどまった。
首相や閣僚が「県民に寄り添う」と繰り返す言葉とは裏腹に、政府の軸足は沖縄にはない。県民の生命と財産を守るために、怒りや恐怖、痛みを本気で共有しようとしていないことは明らかだ。
米軍は昨年12月の名護市安部のオスプレイ墜落では6日後に、今年8月の豪州沖墜落では2日後に飛行を再開した。再発防止を求める政府の姿勢が見せかけだと見透かされているからだ。
米軍のやりたい放題を止められない日本政府はもはや主権国家ではない。米国に唯々諾々と従うことはやめ、主体的に交渉すべきだ。