<社説>加計学園認可へ 多くの疑問残ったままだ


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 学校法人「加計学園」が政府の国家戦略特区制度を活用して愛媛県今治市に岡山理科大獣医学部を新設する計画について、文部科学省の大学設置・学校法人審議会が文科相に「可」と答申した。文科相が近く認可を最終決定し、来年4月にも開学する方向だ。

 しかし多くの国民は数々の疑惑に納得していないだろう。加計学園の理事長は安倍晋三首相の米国留学時代からの数十年来の友人である。今年1月に特区の事業者に選定されるまでの過程で、首相の側近や内閣府が文科省に圧力をかけたとされている。
 早期開学に向け、首相側近が当時の文科次官に働き掛けたり「総理のご意向」を盾に内閣府が文科省に対応を迫ったりしたとされている。
 首相は昨年の1年間に少なくとも7回は理事長と食事やゴルフを共にしている。何らかの力が働いたのではないかと疑われても仕方ない。さらなる解明が必要だ。
 そもそも加計学園の計画が2年前に閣議決定された獣医学部新設の4条件を満たしているのかも問われなければならない。
 政府は閣議決定した「日本再興戦略」で(1)既存の獣医師養成でない構想が具体化(2)ライフサイエンスなど新たに対応すべき分野の需要(3)既存の大学で対応が困難(4)獣医師の需要動向-の4条件を満たすことが必要だとした。
 特区担当だった前地方創生担当相は4条件について「最終的に私が確認した」と答弁した。しかし根拠を聞かれても「経済学的に言えば、つくればつくるほどいい」「具体的な需要を完璧に描ける人はいない」などと説明し、何一つまともに答えなかった。
 今回公表された資料をみると、設置審は当初、計画の目玉となるライフサイエンス分野の獣医師養成に関して「必要性や具体的な需要が不明」と疑問を呈している。
 学園側は需要の根拠として、企業などを対象に実施したアンケートの結果を提示したが、設置審はその後も「養成しようとする人物像が不明確」と指摘していた。需要が明確になっていないのだ。
 獣医学部の要とされる実習についても、設置審は9点の不備を明示していた。学園側は家畜を多く扱う公務員獣医師の人手不足の解消を目指すとしながら、当初の計画には牛の解剖や病理解剖を含めていなかった。4条件を満たしているとは到底思えない。国会での徹底検証が必要だ。
 国家戦略特区諮問会議による業者選定過程も、ほとんどがやぶの中だ。全国的に過剰気味といわれる獣医師の需要などについて、諮問会議で十分な議論があったかも疑わしい。数多くの疑問が残ったままで、政府は答えていない。
 首相は「丁寧に説明していく」と宣言している。国民が納得できるよう説明を尽くすべきである。それができなければ文科相は認可すべきではない。