米軍内の不祥事がまた明らかになった。在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官が部下のセクハラ行為を知りながら、適切な対応を取らずに被害を拡大させ、行政処分を受けていた。
米軍内の性犯罪はこれまでもたびたび問題になっていたが、効果的な対策のないことが改めて示された。日常的に暴力と隣り合わせにいる軍隊での蛮行が、県民に向かわないとも限らない。
1日に判決があった元海兵隊員で軍属の男の事件や2012年に沖縄市で起きた2米兵による女性暴行事件など、米軍関係者による性犯罪は挙げればきりがない。基地と隣り合わせの生活で、いつ被害者になるかもしれない恐怖を強いられる県民にとって米軍内部の不祥事とはいえ、座視するわけにはいかない。
米軍はまず自ら性犯罪を抑止する抜本的な対策を講じるべきだ。それが実行できないのであれば、沖縄に存在する資格は米軍にない。
今回の事案では、沖縄からオーストラリアに連絡将校として赴任した大佐が、部下にその妻の下着を要求したり、オーストラリア軍女性士官にわいせつなメールを送ったりした。ニコルソン氏は10日余りで大佐を沖縄に戻したが、「冗談」という大佐の主張を信じ、セクハラへの申し立てに取り合っていなかった。
ニコルソン氏がセクハラを不問にしたことも問題だが、米軍内部の構造的問題も明らかになった。相次ぐ米軍内の性犯罪に対して、13年に米連邦議会は調査・起訴の権限を被害者が所属する部隊の司令官から外部の検察官へ委譲する法案を審議した。しかし上院軍事委員会は「司令官の責任を弱め、対応能力を下げる」などとして法案を否決した。ニコルソン氏はセクハラの訴えに対し、加害者側の言い分を丸のみし、海兵隊上層部や軍の司法関係者に適切な報告をしていなかった。
起訴などの権限委譲法案を提出した上院議員は否決された際「被害者の声をかき消すもの」という懸念を示した。第三者に調査を任せず、内々で処理しようとしたニコルソン氏の姿勢は、まさにその懸念を証明した形だ。
さらに今回セクハラした大佐は本国でも女児への性的虐待で軍事裁判により有罪判決を受けた。処分が適切であれば被害は防げたはずだ。
ニコルソン氏には次の数字を直視してもらいたい。
米国防総省の報告書で、13~16会計年度(10~9月)の4年間に起きた米軍施設内の性的暴行は2万5千件以上ある。このうち日本国内では嘉手納基地110件、キャンプ・シュワブ96件、キャンプ・コートニー76件、キャンプ・バトラー60件、普天間飛行場54件だった。ワースト5までが沖縄にあるのだ。まずは足元を見直してもらいたい。
「良き隣人」と名乗る以前に、県民の不信感を払拭(ふっしょく)する策を米軍自ら示すべきだ。