<社説>米軍ヘリ飛行再開 「普天間」閉鎖しかない


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 県民の強い反発にもかかわらず、生命を脅かす行為が強行されたことに抗議する。

 米軍は普天間第二小への窓落下を受けて見合わせていた普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリコプターの飛行を再開した。事故からわずか6日である。
 米軍は事故が安全ワイヤの固定を見落とした「人的ミス」だと結論付けた。「機械的、構造的な問題はない」とするが、現場や個人への責任転嫁にすぎない。10月に東村高江で発生したCH53Eの不時着、炎上後も再発防止策を講じたと説明したが事故は繰り返された。
 問題は深刻である。「人的ミス」を起こさない安全管理策が機能していないのではないか。繰り返される事故を見れば再発防止は無理だ。危険を除去するためには普天間飛行場の閉鎖しかない。
 米軍の軍事力を年次的に評価している米保守系シンクタンクのヘリテージ財団の2018年版報告書によると、米海兵隊の全航空機で飛行可能な機体が昨年末時点で41%にとどまっている。今回飛行再開したCH53Eの飛行態勢も、後継機のCH53Kの開発遅れで「重空輸ヘリの所要を満たすには不十分」と問題視している。
 報告書はその上で「機体の老朽化と飛行時間が削減されることが組み合わさると、人的エラーと機械的エラーの両方による飛行中の事故の危険性が高まる」と事故多発の可能性にも言及している。
 県が求めた全軍用機の飛行停止や、普天間所属機の長期の県外・国外へのローテーション展開も受け入れられなかった。根本的な問題を解決しないままの飛行再開は認められない。
 事故を受け、防衛省と在日米軍は学校上空の飛行を「最大限可能な限り避ける」ことで合意した。飛行した場合の罰則はない。小野寺五典防衛相は「基本的には飛ばないということだ。仮に飛行した場合は直ちに米側に申し入れる」と語った。「決して」飛ばないのではない。「最大限」「基本的」などの文言で抜け道を残している。
 問題は普天間飛行場周辺にとどまらない。訓練のためにCH53や垂直離着陸機MV22オスプレイが沖縄を飛んでいる。いつでも、どこでも深刻な事態を招く可能性がある。日米安全保障と言うが、県民の安全を危険にさらして、一体だれの安全を保障しているのか。
 この間の日本政府の対応は非常に不誠実である。防衛省は今回、米軍の事故原因の報告について「防衛省の同種の事故調査を行う知見に照らせば、飛行を再開するための措置がとられたと判断できる」と理解を示した。10月のヘリ炎上後の飛行再開も「再発防止対策がとられている」とお墨付きを与えたが事故が繰り返された。
 対米追従の政府の説明はもはや信頼できない。