県民生活に配慮しない姿勢が改めて浮き彫りになった。強く抗議し、改善を求める。
騒音規制措置(騒音防止協定)を破ることを前提とした米軍嘉手納基地の運用実態が明らかになった。本紙が入手した欧州の米空軍基地と、嘉手納基地の基地司令官らが出した騒音軽減措置指示書とでは、看過できない大きな違いがある。
イタリア・アビアノ米空軍基地の指示書は、イタリアの国内規制よりも前後に1時間ずつ長い午後10時から午前8時を騒音規制時間に設定している。深夜・早朝や週末に飛行する場合は、基地の管理権を持つイタリア軍の許可が必要とする。米空軍は、外来機の飛来時に常駐機の運用に規制をかけるなど、厳しく騒音を規制している。
ドイツのラムシュタイン米軍基地は、深夜・早朝の騒音規制時間中の離着陸やエンジン調整を認める特例は、大統領指示による緊急性の高い任務や急患搬送などとし、限定列挙方式で制限している。
レイクンヒース空軍基地などがある英国では、米軍機の深夜・早朝の規制時間は地元での訓練を目的とした滑走路の使用を禁止している。
日米合同委員会は1996年3月、嘉手納基地の飛行制限を午後10時から午前6時までとする内容で合意した。だが嘉手納基地の指示書では、夏場には午前0時までの飛行を認めている場合もあった。
欧州に駐留する米空軍はその国と国民を尊重し、自ら騒音を軽減する姿勢がある。これがあるべき姿だ。傍若無人な在沖米軍と対照的である。
なぜ、在沖米軍は県民を尊重しないのか。その要因は、イタリア政府などと日本政府の主権に対する姿勢が決定的に違うことにあろう。
米軍がやりたい放題の訓練をしても、米軍機が民間地に墜落して米軍が現場を封鎖しても問題視せず、墜落事故を起こした同型機の飛行再開を即座に追認する。こんな政府が米軍から甘く見られるのは当然である。
沖縄の米軍基地問題は米側に対し、断固とした姿勢で改善を強く要求しない政府の姿勢に起因する。政府の対米追従姿勢の被害を最も受けるのは県民である。政府はいつまでそんな状態に県民を置くつもりなのか。
そもそも沖縄側は、午後7時から午前7時までの米軍機の飛行制限を求めたが無視された。しかも「運用上必要」「できる限り」「最大限の努力」などの文言が並び、米軍が恣意(しい)的に運用できる内容である。今こそ、抜け道のない新たな騒音防止協定を締結すべきだ。
米軍に都合のいい騒音防止協定になったのは、合同委の米側代表を在日米軍副司令官が務め、米側委員6人のうち5人を軍人が占めていることも背景にある。米占領期の異常な状態が今も続いていることに、日本側は異議を唱えるべきである。