<社説>米軍ヘリ不時着 沖縄の空を飛ぶ資格ない


この記事を書いた人 琉球新報社

 米軍はどれだけ県民の生命を危険にさらし、暮らしの安全を脅かせば気が済むのか。宜野湾市の普天間第二小学校運動場への窓落下事故から1カ月もたたないのに、米軍ヘリが再びトラブルを起こした。在沖米海兵隊普天間飛行場所属のUH1Yヘリがうるま市伊計島の砂浜に不時着した。

 伊計島には昨年1月にも普天間飛行場所属のAH1攻撃ヘリが農道に不時着した。島の人々は危険と隣り合わせの生活を強いられている。
 今回の不時着について米海兵隊は日本側に、事故を避けるための「予防着陸」だったと説明している。同じ東海岸の十数キロ先には米海軍基地のホワイトビーチがある。「予防着陸」の場所を安定的に着陸できるホワイトビーチではなく、伊計島の砂浜を選択したことをみても、事故発生が切迫した危険な状況だったのではないか。
 16年12月に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが名護市安部沿岸に墜落し、同じ日に別のオスプレイが普天間飛行場で胴体着陸した。17年8月には普天間所属のオスプレイがオーストラリアで墜落し、乗員3人が死亡した。6月には伊江島と奄美空港、8月に大分空港で緊急着陸している。
 10月には同じ普天間所属のCH53E大型ヘリが東村高江の牧草地に不時着し炎上した。さらに12月には緑ヶ丘保育園の屋根から同型ヘリのプラスチック製の円筒が見つかり、普天間第二小学校の運動場に窓を落下させた。
 これほどまでに事故を多発させているにもかかわらず、米海兵隊はその都度、早々と飛行再開を強行してきた。その理由として強調してきたのが、機体に異常は見られなかったということだ。そして併せて挙げるのが「人為的ミス」だ。
 つまりヘリなどの装備に構造的な欠陥はなく、事故原因を「人為的ミス」という兵員個人へと矮小(わいしょう)化してきた。裏を返せば航空機を運用する際にミスを起こしてしまう兵員が多数存在していることになる。
 米軍は航空機を操縦したり、搭乗させたりしてはいけないはずのミスを犯す兵員を多数抱えたまま、沖縄上空にヘリなどの航空機を飛ばしている。県民からすれば、たまったものではない。
 日本政府もこうした米軍の姿勢を追認してきた。高江の不時着炎上事故の際、日本政府は「事故原因と安全が確認されるまで運用停止が必要だ」と飛行再開に反対していた。しかし炎上原因が明らかになっていない1週間後に米軍が飛行を再開したのに、そのまま追認した。県民の生命は二の次なのだ。
 これ以上、米軍の野放図な基地運用を放置するわけにはいかない。県民が納得できる説明を尽くすまで、米軍は航空機の全機種の運用を停止すべきだ。米軍機が沖縄の空を飛ぶ資格などない。