これほど緩い規制は、規制とは言えない。米軍機の騒音規制措置(騒音防止協定)の厳格化を強く求める。
沖縄防衛局が実施する米軍嘉手納基地の24時間目視調査によると、午後10時から午前6時までの米軍機の飛行回数は2017年11月までの8カ月間で1173回にも上っている。半数を超える604回は午前0時から同5時59分の深夜・未明・早朝に発生している。エンジン調整などを含めれば、騒音回数はさらに跳ね上がる。住民生活に深刻な影響を与えていることは明らかだ。
騒音防止協定では午後10時から午前6時までの飛行が規制されている。ただし、米軍が「運用上、必要」とすれば、騒音規制時間内でも離着陸やエンジン調整ができるようになっている。
このため、嘉手納基地は「日米で合意した騒音軽減措置を順守している。もし飛行している航空機があれば、それは運用上の必要に基づくものだ」としている。
米軍のこのような主張がまかり通るのは、騒音防止協定に例外を設けたことが原因である。米軍機の飛行を規制するどころか、深夜・未明・早朝の飛行に、お墨付きを与えることが大きな目的だったのではないか。騒音防止協定が米軍機飛行などの歯止めになっていない現状では、そう疑わざるを得ない。
住民生活に深刻な影響を及ぼす米軍を優先する日本政府と対照的なのがイタリアだ。
在イタリア米軍の駐留条件を定めた2国間協定「モデル実務取り決め」は基地管理権をイタリア軍が持ち、飛行訓練はイタリア側の許可の下、地元の法規制を順守することを義務付けている。
協定は「地域委員会」の設置も規定する。地元自治体との合意に基づき、イタリアの慣習である「昼寝時間」に配慮し、米軍自身が訓練飛行を厳しく自制している。
沖縄でも1979年、西銘順治知事の提案で県と在沖米軍、日本政府で構成する「三者連絡協議会」が設置された。西銘氏は米軍基地使用協定の締結を目指し、協議の中で使用協定を取り上げる方針だった。
だが、米軍は基地問題を議題にすることを度々拒否し、2003年5月を最後に自然消滅した。日米地位協定の改定などに消極的な日本政府の当事者意識の希薄さが、米軍を増長させたと言えないか。
イタリアが締結した2国間協定こそ、本来あるべき姿である。県民生活を破壊する日米地位協定と騒音防止協定などを放置してきた日本政府は、イタリアに学ぶべきだ。
騒音防止協定に「できる限り避ける」「必要とされる場合を除き」「最大限の努力を払う」などの文言がある限り、米軍機の騒音問題は解決しない。一切の例外を認めない内容への改正が急務である。日米両政府はその責任を全うすべきだ。