<社説>高江の通行制止判決 違法な過剰警備を改めよ


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 取り締まる側の恣意(しい)的な判断で、何でもまかり通るという事態に歯止めをかける司法判断が下された。

 米軍北部訓練場ヘリコプター発着場(ヘリパッド)建設を巡り、反対住民を支援する弁護士が東村高江の抗議現場近くで警察官に違法に約2時間通行を制止され精神的苦痛を受けたとして、県に損害賠償を求めた訴訟で、那覇地裁は県警の制止行為やビデオ撮影について違法と判断、県に慰謝料の支払いを命じた。
 憲法21条は一切の言論表現の自由を、前提条件なしに保障する。米軍基地建設反対の行動は、表現の自由の行使である。非暴力である以上、規制されるべきではない。現在、抗議活動が続く名護市辺野古の新基地建設現場も同様である。
 高江でヘリパッド建設工事が本格化した2016年7月以降、県警は県道70号の規制を恒常化した。当初は抗議活動の参加者だけでなく、付近の住民や農家も通れず、西海岸まで戻って遠回りを余儀なくされる事例が相次いだ。
 判決によると、打ち合わせのため抗議現場に向かった弁護士は県警指揮下の警察官に止められ、停止の根拠を求めたが、回答はなかった。意思に反して2時間以上道路に留め置かれた上、約1時間以上にわたって承諾なくビデオ撮影された。
 判決は「抗議参加者であるとの一事をもって、その者が犯罪行為に及ぶ具体的な蓋然(がいぜん)性があると判断することは、合理性を欠く」と指摘し、抗議活動に理解を示した。
 警察官によるビデオ撮影についても「犯罪行為に及ぶ蓋然性はなく必要性も相当性も肯定できない」と批判し、違法と認定した。
 警察官による過失を認めた今回の判決は、国際基準からしても妥当だ。国連人権理事会は市民の抗議活動を政府が制限する際のガイドラインを定めている。
 内容は(1)長期的な座り込みや場所の占拠もガイドラインが対象とする「集会」に位置付ける(2)座り込みなどによる交通の阻害は、救急車の通行といった基本的サービスや経済が深刻に阻害される場合以外は、許容されなければならない(3)集会参加者に対する撮影・録画行為は萎縮効果をもたらす(4)力の行使は例外的でなければならない(5)集会による渋滞や商業活動への損害も許容されなくてはならない-などだ。
 日本は国連人権理事会の理事国であり、ガイドラインを順守する立場にある。しかし、高江の過剰警備は明らかに国際基準から逸脱している。現在、辺野古の新基地建設の抗議活動に対し、抗議参加者の強制排除やビデオ撮影が続いている。
 民意に反してヘリパッドや新基地を建設するために、行き過ぎた警察権が行使されている。本をただせば、政府に責任がある。今回の判決は政府の姿勢も問うている。