<社説>名護市長選告示 論戦見極め未来の選択を


この記事を書いた人 琉球新報社

 名護市長選が28日告示される。米軍普天間飛行場の代わりとなる新基地を同市辺野古に建設することの是非が最大の争点だ。

 名護市にとどまらず、沖縄県の将来も左右する重大な選挙である。有権者は名護市の未来像を誰に託すか、論戦をじっくりと見極め、十分に吟味した上で貴重な1票を行使してほしい。
 市長選には、3期目を目指す現職の稲嶺進氏(72)=社民、共産、社大、自由、民進推薦、立民支持=と、新人で前市議の渡具知武豊氏(56)=自民、公明、維新推薦=の2人が立候補を表明しており、一騎打ちとなる見込みだ。
 国が大浦湾の護岸工事に着手後、初めての選挙でもあり、県内外から強い関心を集めている。政府や各政党は国政選挙並みに中央からの応援を送り込んでいる。
 1996年に名護市辺野古への普天間飛行場移設計画が浮上してから、名護市民は市民投票や市長選を通して、絶えず移設の是非について選択を迫られてきた。辺野古移設が争点となる市長選は、98年以来今回で6度目となる。
 本来なら、地方の選挙は市民生活に密着した地域の課題を争点にするのが当然の姿であろう。だが名護市では、基地問題が優先する選挙が20年以上も続いてきた。地域が分断されることもあった。
 国が一自治体の住民に安全保障の重荷を背負わせ、市民が翻弄(ほんろう)される事態は、極めて理不尽で無慈悲だ。
 辺野古新基地を争点とした選挙で民意を示しても、国は全く顧みず、力ずくで強硬策を推進してきたことが、問題を長引かせていると言える。真の解決策が求められる。
 辺野古移設に関して、稲嶺氏は「辺野古の海にも陸にも新しい基地は造らせない」と強く反対し、建設阻止を掲げる。渡具知氏は市議時代は容認の立場だったが、出馬表明後は「国と県の裁判の行方を注視していく」として是非を示していない。
 新基地建設では今後、美謝川の水路切り替えなど工事を進める上で市長の許可や協議が必要な手続きが出てくる。市長選の結果が新基地建設に影響するのは確かだ。
 前回まで自主投票だった公明が今回は渡具知氏を推薦し、自公の枠組みで臨む。選挙戦での動向が注目される。
 一方、昨年から米軍機の部品落下や不時着などの不祥事が相次ぐ。県民から強い反発を買ったが、投票行動に影響を及ぼす可能性がある。
 名護市の課題は新基地問題だけではない。経済活性化や雇用促進も重要な課題だ。基幹病院整備は早急に取り組む必要がある。福祉、教育、人口減なども切実だ。両氏は身近な地域問題の解決策もしっかり打ち出してほしい。
 投開票は2月4日。各陣営は本格的な政策論争を活発化させ、明快な主張を通して、有権者が判断できる材料を提起してもらいたい。