石垣市長選は現職の中山義隆氏=自民、公明、維新推薦=が新人2氏を破り、3選を果たした。
防衛省が市平得大俣で計画を進めている陸上自衛隊配備が最大の争点だった。政権与党の推す中山氏が当選したからといって、市民が陸自配備計画に賛成したことにはならない。強引に配備計画を進めることは厳に慎むべきだ。
中山氏は陸自配備計画について「国際情勢を踏まえると、抑止力として南西諸島に配備したいという考え方は理解できる。配備予定地周辺住民の反対もあるので、そういった声を聞き、防衛省・国と協議を重ねた上で最終的な判断をしたい」との姿勢である。選挙戦でも賛否を示さなかった。
中国公船の尖閣諸島周辺への領海侵入などへの危機感から陸自配備計画に賛成する市民がいる。その一方で、配備が計画されている平得大俣周辺4地区住民を中心に反対意見も根強い。
陸自配備計画に唯一反対した宮良操氏=社民、共産、社大、自由、民進推薦=が9526票を獲得したことも、中山氏は最終判断する上で重視する必要がある。
「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」は昨年9月、陸自配備に反対する市民の署名を中山氏に提出した。中山氏は「大変多くの皆さんが署名したことは重く受け止めたい」と述べていた。その姿勢を堅持してほしい。
中山氏がテーマとする「日本一幸せあふれるまち石垣市」に、地対艦誘導弾・地対空誘導弾部隊の配備がふさわしいのかも慎重に検討してもらいたい。
中山氏の当選は、その行政手腕を市民が高く評価した結果といえよう。
中山氏は「2期8年で観光を中心に、経済を良い方向に回すことができた」と自負している。2017年の石垣市を含む八重山入域観光客数は138万6646人で、過去最高を更新した。10年前の07年の78万7502人から1・76倍に増えた。市をはじめ、関係団体の努力のたまものである。
好調な八重山観光だが、観光客の「量」から「質」への転換や年間を通した観光客数の平準化などが大きな課題である。
中山氏は新石垣空港の2500メートル滑走路化、国際的な観光地化のほか、通訳の育成や多言語対応の推進、クルーズ船用岸壁の早期実現などを公約に掲げた。課題に対する的確な政策に加え、2期8年の実績が公約実現の期待感を市民に抱かせたといえよう。
そのほか、ヤギや豚などの特産品ブランド化、大会などで沖縄本島に渡る児童生徒らの宿泊施設や郷友会活動の拠点となる八重山会館建設、ひとり親世帯支援拡充などの実現も市民と約束した。
いずれも市民生活にとって重要な政策である。中山氏に着実な実現を期待したい。