前代未聞の不祥事が明らかになった。財務省は学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、14の文書で書き換えがあったことを認めた。
国民の財産である公文書を国会答弁に合わせて改ざんしたことで行政への信頼は地に落ちた。国民とその代表である国会に偽りの文書を公開したことは、情報開示に基づく意思決定という民主主義の根幹を揺るがす事態だ。
政府は財務省理財局の一部による指示だったとするが、現場の責任を強調することで政治責任を逃れようとすることは許されない。麻生太郎副総理兼財務相は自身の進退を「考えていない」と言うが、監督責任者として辞任は免れまい。安倍晋三首相も、麻生氏について「(調査の)責任を果たしてもらいたい」と辞めさせるつもりはない。公文書改ざんという重大さを理解しているのか。内閣総辞職以外に信頼回復の道はない。
財務省の国会への報告によると、書き換えられたのは2016年6月に森友側と国有地の売買契約を結ぶ際の決裁文書に添付した調書などだ。
当初の文書に記載されていた交渉の経緯や契約など「本件の特殊性」「特例的な内容」といった文言や複数の政治家の名前が、国会議員に開示された文書で削除された。
森友側が発言した安倍首相夫人の昭恵氏の言葉や、昭恵氏が森友学園を視察し講演したなどの内容もなくなった。
「本件の特殊性」「特例的な内容」などは、これまで国会で何度も指摘されてきた安倍首相、昭恵夫人への配慮を示すとしか考えられない。国会答弁で文書を破棄した、記録がないと強弁したのも、公文書偽造という重罪に手を染めたのも、権力におもねったと考えればつじつまが合う。
安倍首相は17年2月の衆院予算委員会で、森友学園の国有地売却に自分や妻が関与していたなら議員辞職すると発言した。自らの発言に責任を持つのであれば、潔く辞めるのが筋だ。
安倍首相は財務省の報告を受け「全容が明らかになった段階で組織の立て直しに全力を挙げる」と語った。「財務省の暴走」という構図をもって幕引きを図ろうという意図が透けて見える。
だが官僚の忖度(そんたく)を生み出す要因をつくったのは、ほかでもない安倍首相自身だ。安倍首相の下につくられた公務員制度改革に関する懇談会は官僚人事の一元管理を提言した。実際に府省庁の幹部人事を決める内閣人事局を発足させたのも安倍首相だ。官僚を全体の奉仕者でなく、人事権者しか見ない政権への奉仕者に変えた罪は重い。
森友問題では近畿財務局職員が自殺する悲劇も起きた。佐川氏と昭恵氏の証人喚問や、同じく便宜供与が疑われる加計問題を含め、疑惑解明へ課題は多い。国民はもう現政権に対応を委ねるつもりはない。内閣総辞職し、新政権に全容解明を任せるべきだ。