<社説>米、遺族へ補償金拒む 地位協定の欠陥是正せよ

 米軍属女性暴行殺人事件の被告が遺族に支払うべき損害賠償の補償肩代わりについて、米側が被告の身分を理由に対象外だとして拒否していることが分かった。日米地位協定で定めた補償対象の「被用者」に、米軍の直接雇用でない軍属は含まれないとの主張だ。地位協定の欠陥と言わざるを得ない。

 補償の肩代わりは日米地位協定第18条6項で定められている。米軍関係者の公務外の事件・事故などで、被害者側は米政府に賠償金を請求できることになっている。
 ところがこの6項で補償対象について「合衆国軍隊の構成員または被用者」と規定している。米側は「被用者」の中に、米軍が直接雇用していない軍属は含まれないと解釈しているようだ。
 裁判権では「被用者」という線引きはない。軍属は米軍人と同じ日米地位協定に基づく取り扱いを受ける。裁判権では特権を受けるのに、補償で支払い対象から除外されれば、米側のご都合主義としか言いようがない。
 2008年に沖縄市で発生した米軍人2人によるタクシー強盗致傷事件では、運転手の男性が重傷を負わされた。男性は心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しめられ、補償が実現しないまま12年に死去している。
 補償が実現しなかったのは日本側の補償審査が終わらなかったためだ。男性の代理人が09年5月から14年10月まで、5回にわたって損害賠償請求書を提出した。しかし日本側が損害額の算定などを理由に審査を継続し、結論を出していなかったのだ。
 このため男性の長男が昨年12月、損害賠償請求訴訟を那覇地裁に起こした。10年たっても補償が実現できない現状は現行制度のいびつさを証明している。これでは遺族は報われない。
 米軍人・軍属による事件被害者の会は2005年、米軍人、軍属らの不法行為による被害者を救済するために、日本政府が損害を賠償する「損害賠償法」の制定を求めて国会議員や外務省などに要請活動を展開した。
 その際、外務省などは「日米地位協定が存在する以上、新たな法律を制定するのは困難」と答え、制定に否定的な立場を示した。地位協定の欠陥によって被害者が泣き寝入りしているからこそ法整備を求めたのだ。その声に耳を傾けないのなら、地位協定の抜本改定に踏み切るべきだ。
 県内の米軍人・軍属、家族による刑法犯摘発件数は2017年は48件だった。16年の23件から倍増している。被害者が救済されない状況を放置してはならない。
 米軍属女性暴行殺人事件の被告については現在、日米双方が「被用者」に該当するかについて協議を継続している。米側には「被用者」に該当するとの判断を求めたい。そして補償の肩代わりを速やかに実行に移すべきだ。



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