73年前のきょう、沖縄戦が始まった。1945年3月26日、慶良間諸島の阿嘉島に米軍が上陸した。その後、米軍は座間味島や渡嘉敷島などを制圧し、4月1日の沖縄本島上陸につながっていく。
島での戦闘は多くの犠牲者を出した。米軍の砲爆撃に加えて、日本軍による強制と誘導で「集団自決」(強制集団死)に追い込まれた住民500人余が命を奪われた。
今、防衛省は「島嶼(とうしょ)防衛」を掲げ、南西諸島の軍備強化を一段と進めている。島が戦場になると住民の生命が危険にさらされるのは明らかだ。
私たちは沖縄戦の未曾有(みぞう)の犠牲から「軍隊は住民を守らない」という教訓を導き出した。政府はそれに学び、沖縄の軍事基地化をやめるべきだ。
27日には、陸上自衛隊の離島防衛専門部隊「水陸機動団」が新設される。部隊運用を一元的に担う陸上総隊と合わせ、54年の陸自発足以来最大の組織改編になる。
島嶼防衛は、国の「防衛計画の大綱」で打ち出されている。中国の軍拡、海洋進出を名目に、今年末に見直す次期大綱でも「南西地域の防衛強化」を盛り込む見通しだ。
2017年版防衛白書によると、島嶼防衛の「基本的考え方」はこうだ。
敵の侵攻は陸海空自衛隊が一体となって阻止・排除するが、侵攻された場合には「航空機や艦艇による対地射撃により敵を制圧した後、陸自部隊を着上陸させるなどの島嶼奪回のための作戦を行う」。
島での戦闘は守るより攻める方が有利なので、侵攻されたら敵に島をいったん占領させる。その後、陸自部隊が逆上陸して武力で島を奪い返す。要は、敵に奪われることを前提とした作戦である。
住民の存在はまるで視野に入っていない。尖閣のような無人島ではなく、有人島で戦闘が起きれば、間違いなく住民が巻き込まれてしまう。
そもそも離島奪還とは、領土・領海を防衛するのが主目的で、住民の安全は二の次でしかない。
想定そのものが「第二の沖縄戦」である。沖縄を再び戦場にし、国策の犠牲に追い込もうというのか。絶対に認められず、敢然と拒否する。
27日発足の水陸機動団は「日本版海兵隊」とも言われ、南西諸島での離島奪還作戦に当たる。長崎県佐世保市に2個連隊約2100人態勢を配備するが、3個目の連隊を米軍キャンプ・シュワブやハンセンに置く構想もある。米軍基地に加え、自衛隊の新部隊まで配備されると、過重な負担がさらに増大する。
昨年の与那国への陸自配備をはじめ、宮古島や石垣島、沖縄本島への配備計画など、南西諸島は軍事強化が進む。
沖縄戦では小さな島に多数の日本軍が駐屯し、軍民混在となったために、軍人より多い住民の死者を出した。
政府は軍事で対抗するのではなく、外交努力にこそ力を注ぐべきだ。