はしか(麻疹)の感染者が県内で拡大している。8日現在で33人。3月下旬に4年ぶりの患者が確認されて以降、日を追うごとに増え、止まらない状況だ。県は警戒レベルを最高の「3」に引き上げ、対策に乗りだしている。
はしかは感染力が極めて強い病気だ。乳幼児が感染すると、重症化して肺炎や脳炎などの合併症を起こす恐れがあり、最悪の場合は死に至る。
だが、防げる病気でもある。最大の予防策はワクチンの予防接種だ。未接種の乳幼児は早めに受けるよう勧めたい。中長期的には、全国最低レベルの県内接種率を官民挙げて高めていくことが不可欠だ。
今回の流行は、3月中旬に観光で来沖した台湾の30代男性が発端だ。本島各地の観光地や商業施設、空港など不特定多数が出入りする場所を訪れたことで、多くの患者が発生したとみられる。
ウイルス感染で起こるはしかは特効薬がない。患者と直接接触しなくても、同じ空間にいただけでも感染する。ワクチン接種で防ぐしかない。
国が定めた定期予防接種は第1期(1歳)と第2期(小学校入学前)の2回ある。
国立感染症研究所によると、県内の2016年度接種率は第1期が95・2%と全国でワースト6位。第2期に至っては全国最下位の89・8%だった。全都道府県で唯一9割を下回った。
県内では1998~99年と2000~01年に2度の大流行があり、それぞれ3歳以下の8人と9カ月の1人がはしかで命を落とした。
あの時多くの県民が予防接種を受けてさえいれば悲劇は防げたかもしれない、という思いから生まれたのが「沖縄県はしかゼロプロジェクト」だ。県内の小児科医、公衆衛生関係者、保健師、行政担当者がはしか根絶を掲げ、01年に発足した。この間、対策は効果を上げてきた。
はしか患者の全数把握事業は全国のモデルとなった。全ての医療機関から患者(疑い含む)の報告を受けた保健所が、患者と接触した全員の健康調査をする仕組みだ。日頃から関係機関の連携があり、今回も対応が早かった。
県は無料で受けられる1歳と入学前の定期予防接種を呼び掛けている。さらに6カ月~1歳未満には接種費用の半額を補助する。この機会に多くの子が受けてほしい。
成人については過去に罹患(りかん)して免疫のある人が多く、重症化はまれだという。ワクチンが限られているのなら、当面は乳幼児や子どもと接する機会の多い人、体力の弱い人、リスクの高い人を優先すべきだろう。重症者や死亡者を出さないことを主眼にしたい。
今回の感染源は海外からの移入だった。外国人客が急増する中、観光立県としての対策も求められる。外国語での注意喚起に加えて、接触の多い観光業など関係者への接種促進、医療機関との連携態勢構築にも取り組んでほしい。