安倍晋三首相主導だったのではないかという疑いが再び浮上した。
学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画を巡り、愛媛県職員が2015年4月に官邸を訪れ、国家戦略特区担当だった柳瀬唯夫首相秘書官(当時)らと面会した際のやりとりを記した文書に、柳瀬氏が「本件は首相案件」と述べたとの記載があったことが明らかになった。
文書が明らかになっても柳瀬氏は「記憶の限りではない」と否定する。愛媛県側がうそをつく理由はない。どちらが正しいのか。国会に特別委員会を設置して、柳瀬氏と加計孝太郎理事長らを証人喚問して、徹底究明するよう求める。
15年4月の愛媛県や今治市と柳瀬氏、藤原豊内閣府地方創生推進室次長(当時)との面談は、獣医学部新設に向けた転機となった可能性が指摘されている。
県と市は07~14年に構造改革特区での獣医学部新設を15回提案したが、採用されなかった。だが15年6月、柳瀬氏らとの面会後に国家戦略特区へ申請すると一転、新設が認められた。なぜか。
国家戦略特区制度による獣医学部新設計画の公表前に、文部科学省が内閣府とやりとりしたとされる複数の記録文書が判明している。
早期の開学を巡り「総理の意向」「官邸の最高レベルが言っていること」といった記載があり、官邸の働き掛けや官僚による忖度(そんたく)があったのではないかとの疑惑が広がった。加計理事長は安倍首相の「腹心の友」だ。文科省の前川喜平前事務次官も官邸からのアプローチがあったと主張した。
前川氏が指摘するように、愛媛県が作成した15年4月の文書は「安倍晋三首相の明確な意向のもとで新設を認めようとする『加計ありき』の動きがあったことを示す決定的な証拠」ではないか。
愛媛県の文書は藤原氏が「要請の内容は総理官邸から聞いており」「政府としてきちんと対応していかなければならない」と発言したと記録している。藤原氏は構造改革特区ではなく「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と述べるなど、獣医学部新設を実現させるため指南をしている。
安倍首相はこの間、加計理事長から計画の相談や依頼は一切無かったと答弁した。しかし文書には、安倍首相と学園の加計理事長が会食で計画について話を交わしたことがうかがえる記述もある。
安倍首相は11日の衆院予算委員会で、獣医学部新設計画について「私から指示を受けた方は一人もいない」と述べた。認可に至る経緯について「プロセスも問題ない」と強調した。この発言を信じる国民はどれだけいるだろうか。
安倍首相が政治権力を乱用したのではないかという疑いが生じている。政治不信を深めさせた責任は重い。