<社説>日米の安全基準逸脱 沖縄に法は及ばないのか

 日本は法治国家ではないのか。それとも沖縄に限って法は適用されないのか。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、新基地が完成した場合、沖縄工業高等専門学校や沖縄電力の鉄塔以外に、豊原区の一部集落や米軍キャンプ・シュワブ内にある辺野古弾薬庫が、安全のために日米がそれぞれ定める高さ制限を超えることが分かった。
 防衛省は「米側と調整を行い、高さ制限の適用は除外される」と繰り返すだけで理由を明らかにしていない。住民の安全に対してこれほど不誠実な対応はない。新基地建設を直ちに中止することを強く求める。
 米側の施設統一基準は、滑走路から2286メートルの範囲にある工作物の高さを制限している。辺野古新基地ができた場合、標高約55・7メートルを超えた建物があってはならないことになっている。
 豊原区では、久辺郵便局や沖縄北部雇用能力開発総合センター周辺が標高約57メートル~約60メートルに位置しているほか、標高約50メートルの地点に公共施設や集落があり、建物の高さによっては基準を超える可能性がある。
 加えて辺野古弾薬庫には爆発物などが貯蔵されており、同施設が飛行の安全を確保する目的の高度規制に抵触することで、新基地の安全性に重大な懸念が生じる。
 一方、日本の航空法は、空港周辺に45メートルを超える建築物などを設置してはいけない。仮に1800メートルの滑走路を持つ辺野古新基地に同法を適用した場合、その範囲は半径3千メートルとなり、沖縄高専や久辺3区などの一帯が含まれることになる。
 辺野古周辺は丘陵地が多くその分、高い建物も存在するため、日米の安全基準からして飛行場建設地には適さない。土地選定の段階で分かっていたはずだ。重大な事実を伏せたまま、安全基準の例外扱いにして新基地建設を強行していた。「辺野古が唯一の選択肢」と繰り返してきた政府の説明はうそだった。
 米軍は新基地の周辺地域上空の飛行を避けるため場周経路を設定している。しかし、普天間飛行場や嘉手納基地では度々、場周経路を外れたり、市街地を低空で飛行したりする様子が確認されている。時には部品も落下させている。新基地に限って米軍が約束を守る保証はない。
 そもそも在日米軍作戦部が普天間飛行場の移設先を検討した1996年時点で、航空機運用の観点から滑走路の長さや、駐機場の確保の優位性で県外の自衛隊基地を最高点と結論付けていた。
 しかし、安倍晋三首相が明らかにしたように「本土の理解が得られない」という政治的理由で、県内移設にこだわっているにすぎない。建設が進めば辺野古周辺は「世界一危険」と言われる普天間飛行場の二の舞になる。そういう事態は受け入れられない。