米英仏3カ国はシリアへの軍事攻撃を行った。シリアのアサド政権が化学兵器を使い、市民を殺傷したと断定した上での懲罰的なものだ。しかし化学兵器の使用を巡っては情報が錯綜(さくそう)している。

 化学兵器禁止機関(OPCW)が14日から現地で調査を開始しようとしていた。調査を待たずしての攻撃は正当性を欠き、大義なき攻撃と批判されても仕方ない。
 化学兵器が非人道的な兵器であることは自明の理である。だからこそ戦争時の化学兵器使用は1925年のジュネーブ協定書で禁止された。97年発効の化学兵器禁止条約で開発、生産、貯蔵、使用が禁止されている。シリアで使用されたとしたら言語道断であり、国際社会を挙げて非難しなければならない。
 化学兵器の使用が疑われているのは今月7日、シリアの首都ダマスカス近郊の東グータ地区ドゥーマでの攻撃だ。市民多数が死傷したと伝えられている。
 この攻撃について、米英仏はアサド政権によるものと断定している。一方、ロシアとシリアは「でっち上げだ」と否定し、真っ向から対立している。トランプ米大統領やフランスのマクロン大統領はアサド政権が化学兵器で反体制派を殺傷したとするが、明確な証拠を示していない。
 化学兵器使用の根拠の一つになっているのが、反体制派の救助組織「シリア民間防衛隊(ホワイトヘルメッツ)」による発表だ。化学兵器攻撃が実施され、49人が死亡したとしている。
 これに対して、同じシリア反体制派の人権団体幹部は共同通信に「アサド政権に抵抗する反体制派への支持を結集するため、でっち上げられた」と主張し、政権による攻撃との見方を否定している。
 ロシア国防省は現場で採取した土壌などの試料から毒物は検出されなかったと発表した。さらにマティス米国防長官も12日の国家安全保障会議(NSC)で化学兵器を使ったという「説得力のある証拠」を示さなければならないと言っていた。
 またシリア情報を独自に収集し分析するシリア人権監視団(英国)も「化学兵器が使用された証拠を持っている国があれば、証拠を示す必要がある」と表明し、国際機関による調査を求めている。
 米国は2003年、大量破壊兵器保有を理由にイラクに侵攻した。しかし大量破壊兵器は確認されず、虚偽の情報だった。同じ轍(てつ)を踏むことがあってはならない。
 現地調査での真相究明こそ先決である。化学兵器が使われた明白な根拠を示さず武力行使に踏み切った米英仏の行動は、国際社会の広範な支持は得られない。
 場当たり的ともいえる武力攻撃では、シリア国民が望む永続的な平和を実現することなどできない。現地調査を優先し、外交による解決を模索する必要がある。