国民から徴収した税金を使う公共事業は公正、厳格でなければならない。
名護市辺野古の新基地建設を巡り沖縄防衛局が2014年に発注した工事について、海上警備業務を請け負った警備会社が約7億4千万円を過大請求していた。防衛局は不正を把握した後も、この警備会社との契約を続けたため、水増し請求が繰り返された。
防衛省の発注工事に関する要領は「不正や不誠実な行為」に該当する場合は、一定期間の指名停止措置を行うと規定している。本来なら過大請求をした警備会社を指名停止にするか入札を辞退させるべきだ。しかし、防衛局は過大請求を注意だけで済ませている。
小野寺五典防衛相は「当時は、やはり適切ではなかった」と釈明した。不適切な対応である以上、防衛省は事実関係を究明し責任の所在を明らかにすべきだ。
防衛省によると、問題となった警備会社のライジングサンセキュリティーサービスは、14年8月~17年に防衛省が委託契約した海上警備業務5件(約104億円)を受注した。海上警備はライジング社の独占状態で、一般競争の形骸化は問題だ。
防衛局が15~16年に発注した海上警備業務は、公共工事の人件費の積算に用いる「公共工事設計労務単価」(公表単価)より2倍前後高いライジング社の見積もりを採用し契約した。なぜ防衛局は「言い値」に応じたのか。
この契約について会計検査院は昨年11月、警備員の人件費約1億9千万円分が過大積算で、公表単価を採用すべきだったと指摘し、防衛省に改善を要求した。
ライジング社と100%子会社のマリンセキュリティーは、新基地建設に抗議する市民らの顔写真や名前などを記録したリストを作成し、プライバシーや表現の自由の侵害だとして抗議された。マリン社は従業員に長時間労働を強いているとして沖縄労働基準監督署から労働環境を改善するよう指導されている。従業員からパワーハラスメントの訴えもあった。
一連の行為は「不正や不誠実」に当たり、指名停止の要件に当てはまるのではないか。なぜ防衛局は、この業者を使い続けたのか。県民に説明する責任がある。
マリン社は今月22日に軽油を海上に廃棄した疑いで書類送検され指名停止を受けた。ライジング社も管理責任と現場監督責任を問われて指名停止処分となった。あまりにも遅過ぎる処分だ。
新基地建設工事を巡り13~15年の2年間に、受注した65社のうち、少なくとも14社に防衛省や自衛隊OBが再就職していたことが明らかになっている。OBが受注を働き掛けたのではないかとの疑念が付きまとう。建設の是非だけでなく、建設費そのものの公平性、透明性が厳しく問われている。