財務省は女性記者へのセクシャル・ハラスメントを報じられ事務次官を辞任した福田淳一氏について、セクハラがあったと認定した。6カ月の減給20%の懲戒処分に相当するとして、減給分の141万円を差し引き、退職金5178万円を支払う。福田氏はセクハラを否定している。
財務省は「これ以上の事実解明は難しい」として調査終了を表明した。どれだけの事実を解明したというのか。
福田氏のセクハラは財務省を取材する女性記者らに、飲食の場で繰り返し行われたとされる。週刊新潮が報じ、インターネット上で音声も公開した。
財務省によると、福田氏には顧問弁護士が3回聴取した。4月4日夜にテレビ朝日の女性社員と一対一で飲食したことを認めたが、セクハラは一貫して否定したという。
女性社員は1年半ほど前から数回、福田氏と会食した。そのたびにセクハラ発言があり、身を守るために録音した。福田氏は女性を飲食店に呼び出して「胸、触っていい?」「抱きしめていい?」「浮気しよう」などとセクハラ発言を繰り返した。
セクハラは明らかではないか。福田氏が否定していることが不可解だ。財務省がセクハラを認定したのは、女性社員の被害を訴えたテレビ朝日側の主張を覆すだけの反証を福田氏が示していないと判断したからだ。むしろ財務省は反証できない福田氏を徹底的に追及すべきではないか。
それができなければ官僚トップに対するおよび腰の調査というほかない。真相究明には程遠い。政府に対する批判が高まることを懸念し、早期幕引きを優先したとしか思えない。
セクハラの防止に関する人事院規則は「各省庁の長は防止や排除に努めるとともに、問題が生じた場合には必要な措置を迅速かつ適切に講じなければならない」と規定している。運用指針はセクハラについて「信用失墜行為、国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行などに該当し、懲戒処分に付されることがある」としている。
財務省幹部らの対応は人事院規則や運用指針の精神からは程遠い。顧問弁護士に調査を依頼したことも中立性に欠けると批判を受けた。さらに矢野康治官房長は被害女性に「(被害を名乗り出るのが)そんなに苦痛なことなのか」と言い放った。
麻生太郎財務相は「はめられ訴えられているんじゃないかとか意見がある」と語り、被害女性に悪意があったと言わんばかりだ。
言語道断だ。これで調査終了だと言われて、どれだけの国民が納得するだろうか。財務省は顧問弁護士ではなく、第三者による徹底調査を実施すべきだ。セクハラが認定された以上、麻生氏は福田氏を擁護するかのような常識外れの発言を繰り返した責任を取って辞任すべきだ。