<社説>基地水質調査不許可 米軍は隣人の義務果たせ


社会
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 汚染源を特定できなければ、対策のとりようもない。米軍の不誠実な対応に強く抗議する。

 米軍基地周辺の河川を水源とする北谷浄水場から高濃度の有機フッ素化合物(PFOS)が検出された問題は、米軍嘉手納基地が汚染源と見られている。
 県は2016年1月以降、嘉手納基地への立ち入り調査を複数回要請しているが、米軍に拒まれ実現していない。米軍は沖縄防衛局の立ち入りを認めたものの、肝心の基地内での水質調査は認めなかった。米軍の証拠隠しを強く疑わざるを得ない。
 県企業局が14年2月から15年11月にかけて月1回、北谷浄水場の水源を調査したところ、基地排水が流れる大工廻川などで高濃度のPFOSが検出された。
 その調査結果が公表されたのは16年1月である。2年半近くたっているにもかかわらず、汚染源が特定できないのは異常というほかない。
 防衛局は17年2月、基地内河川の水質調査業務を一般競争入札にかけた。入札公告によると、調査は17年9月までで、大工廻川などの地形環境、河川流況、水質の現況を把握することが目的である。だが、基地内では川を見ることなどしか許されなかったという。防衛局が水質を調査できた地点は全て米軍施設・区域の外である。
 こんな不完全な調査で「結果を踏まえて今後の水質浄化対策の必要性や手法を考察する」ことなど、できるはずはない。税金で実施した調査が無駄になることを懸念する。
 米軍が防衛局に基地内立ち入りを認めたのは、協力姿勢を偽装するのが目的だったのではないか。
 企業局は「嘉手納基地が汚染源である可能性が高い」として、水質浄化などにかけた費用2億円余の補償を防衛局に求めている。防衛局は「因果関係が確認されていない」などとして応じていない。
 企業局は16年度にPFOS除去に有効な粒状活性炭を1億7千万円かけて取り換えた。企業局によると、少なくとも23年まで毎年交換する予定である。その費用が補償されない場合、県民の支払う水道料金が値上げされることも予想される。
 15年9月に発効し、菅義偉官房長官らが「歴史的な意義を有している」と高く評価した在日米軍基地の現地調査に関する「環境補足協定」は一切役立っていない。日本側の立ち入り調査を米側が拒否できない協定に早急に改めるべきだ。
 環境補足協定に署名したカーター米国防長官(当時)が「私たちは良き隣人として、米軍基地の周辺地域の懸念に配慮しないといけない」と述べたことを、米軍は思い起こす必要がある。
 県民生活に多大な悪影響を及ぼしている以上、積極的に調査に協力することは米軍の最低限の義務である。