一体何があったのか。一向に真相が見えてこない。日本大アメリカンフットボール部の選手が、危険で悪質なタックルをして、関西学院大の選手を負傷させた問題だ。

 解決が長引いているのは、当事者である日大側が納得のいく十分な説明責任を果たしていないからだ。日大は第三者委員会に結論をゆだねる方針だが、真相究明と再発防止を急ぐ必要がある。
 この問題を巡っては、日大の選手と前監督、前コーチがそれぞれ記者会見した。主張の違いだけでなく、問題への向き合い方、姿勢に落差があり、議論を呼んでいる。
 反則行為をした宮川泰介選手は、内田正人前監督と井上奨前コーチから指示があったと明かした。「1プレー目でつぶせ」と言われ、心理的に追い詰められていった状況を詳細に吐露した。
 宮川選手の犯した行為は決して許されるものではないが、「たとえ監督やコーチに指示されたとしても、自分で判断できなかった自分の弱さ」と自身の非を認め謝罪した。20歳の若者が顔も名前もさらし、時に言葉に詰まりながら謝る姿からは真摯(しんし)で誠実な思いが伝わってきた。
 これに対して、日大側の対応は後手後手だ。危険なプレーの動画が繰り返し報道されても、責任者が表に出て説明することはなく、関学大への直接謝罪は約2週間後だった。日大選手が関学大選手に直接謝罪したいという申し出も、前監督が制止していた。
 前監督と前コーチの記者会見は、日大選手の会見の翌日夜に急きょ開かれた。理解し難い点が多々あった。
 前監督は指示を否定した。前コーチは「つぶせ」とは言ったが、けがをさせる目的ではなかったと主張した。選手の受け取り方の問題だと言わんばかりだ。それなら、なぜ反則行為の直後に選手を指導、注意しなかったのか。矛盾している。責任転嫁でしかない。指導者として失格だ。
 試合直後の前監督の発言も音声データで発覚した。「宮川はよくやった」と評価し「反則と言うんであれば僕の責任だ」と述べている。
 スポーツマンシップのかけらもない態度だ。前監督は指示があったかなかったかだけに問題を矮小化(わいしょうか)するのではなく、卑劣な反則行為に至った経緯を率直に語るべきだ。
 勝利至上主義に陥っていなかったか。指導者に絶対服従という時代錯誤の体質がはびこっていなかったか。これらはスポーツの本来の精神からは懸け離れたものである。
 日大当局は組織防衛に走っているように映る。本来守るべきは学生、選手だが、その姿勢が見えない。
 鈴木大地スポーツ庁長官は「大学スポーツ全体の課題として考えるべきだ」と指摘した。大学スポーツは教育の一環であり、人間形成の場だ。他の大学でも同様の体質は残っていないか。悪弊根絶に向けて、うみを出すときだ。