<社説>防衛局員が投資本 基地の効果喧伝おかしい

 沖縄防衛局の職員が県内の軍用地への投資を薦める単行本を出版し、自身も米軍嘉手納基地などの土地を購入して軍用地料を得ていたことが分かった。防衛省は省に無断で出版したことを問題視し、処分を検討しているという。

 しかし、問題の本質は無断出版ではない。米軍基地が返還されて跡地利用が進めば、税収も雇用も増えることは、那覇新都心や北谷町の西海岸エリアなど目に見える形で現れている。にもかかわらず軍用地は「安定的で長期的な収入が見込める」とうたい、「リスクは基地返還」などとして、あたかも米軍基地が沖縄に多大な経済的なメリットを生んでいると強調している。
 職員は著書で軍用地購入を「究極のローリスク・ミドルリターンの投資だ」などと紹介した。一方で基地返還をリスクとし、基地の存続に反対する一坪反戦地主会を「契約手続きで多額の税金を費やしている」と批判している。
 軍用地が「金融商品」として取引が活発化したのは2008年のリーマンショック後だ。株価が大きく下落する中で、利回り2~3%ほどだが、日本政府が賃料を支払う安定性が注目された。不動産業者が土地を分割して価格を下げたことも購入者を増やした。
 現実には、跡地利用が成功した場所では軍用地料よりも民間への賃料の方が高くなった。地主に利益をもたらし、雇用を生み、地域経済に貢献している。那覇新都心で返還後、直接経済効果が31倍の約1634億円、雇用が93倍の約1万5千人になったのが典型だ。
 同書は軍用地が復帰後、上がり続けてきたことを挙げ「ドル箱」と称する。軍用地料の上昇は、日本政府が米軍に基地を安定して提供するために地主の不満を抑える、いわば「政治価格」だ。財源は私たちの税金である。
 政府内でも軍用地料の金融商品化が議論になった。民主党政権時代の2010年、第1回事業仕分けで軍用地料の一部経費が廃止を目指す「仕分け」の対象に上げられた。委員からは基地被害と関係ない県外在住者が軍用地料を得ることへ疑問が呈された。
 軍用地の賃貸借契約や管理を担う防衛局職員が基地を「金融商品」として喧伝(けんでん)する意図は何であろうか。
 戦後、米軍に強制的に土地を奪われ、対価としてわずかな地料が設定された。復帰後は政府による米軍基地維持政策の一環とされた。それが金融商品と化し、さらに基地被害を受けない県外在住者の投機対象となっている現状は、基地経済の「ひずみ」の一つだ。投資目的の地主の増加が今後の返還跡地の開発に悪影響を与えることも懸念される。
 職員は防衛省が買い入れた土地などの財産管理業務に携わったという。資産形成に職務で知った情報を参考にしたのであれば、国家公務員倫理規定に違反する。防衛省は厳密に調査すべきだ。