<社説>ヘリ発着帯撤去要求 無視は断じて許されない


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 住民を代表する議会の声は尊重されてしかるべきだ。日米両政府はそれを真摯(しんし)に受け止め、実現する責任がある。無視することは断じて許されない。

 東村議会が村内の米軍北部訓練場N4地区にあるヘリコプター発着帯(ヘリパッド)2カ所の即時撤去などを求める抗議決議と意見書を全会一致で可決した。
 この二つのヘリパッドは2014年7月までに完成し、15年2月に米側へ先行提供された。東村議会は即座に使用禁止を求める抗議決議を可決した。だが、米軍はこれを無視している。米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイなどがN4地区で昼夜問わずに離着陸訓練している。
 N4地区のヘリパッドは、住宅地から約400メートルしか離れていない。民間地の近くにヘリパッドを新設すること自体、不適切である。日本政府が米側に新設しないよう強く要求すべきものである。
 ヘリパッドは集落を取り囲むように6カ所新設された。村議会が撤去を求めているのは2カ所だけである。本来なら全ての撤去を要求していいところを「まさに危険と隣り合わせの状況」を最も住民に強いている2カ所に絞ったのだろう。
 極めて切実で、最低限の要求である。日米両政府にとっても、決して実現不可能な要求ではない。
 北部訓練場には大小21カ所のヘリパッドが点在する。2カ所を撤去しても何ら差し支えないはずだ。撤去して足りなくなるならば、訓練そのものを減らすのが筋である。
 沖縄防衛局の騒音調査からは、N4地区のヘリパッドが米軍に提供されて以降、騒音が激増しているのが分かる。
 高江区牛道では60デシベル以上の騒音が15年度4216回、16年度6887回、17年度5840回に上った。N4地区のヘリパッド運用前の13年度の918回と比べると、15年度4・59倍、16年度7・50倍、17年度6・36倍と大きく増加している。
 60デシベルは走行中の自動車内に相当する。自然豊かな高江では都市部に比べ、うるささは増す。牛道以外でも騒音は軒並み増えており、住民の生活環境の悪化は明らかである。米軍、日本政府はこの状況を直視して対応すべきだ。
 オスプレイなどが住宅から至近距離で旋回、離着陸を繰り返す状況は異常である。基地被害で住民を苦しめていることに胸を痛めることもなく、平然と訓練を続ける米軍、それを容認して改善責任を放棄する日本政府に強く抗議する。
 N4地区ではこの間、オスプレイが午後10時以降に離着陸を繰り返し、その騒音の影響で、児童生徒が眠れずに睡眠不足となり、学校を欠席する事態も起きた。
 迷惑施設のヘリパッドの即時撤去と併せて、集落周辺での訓練中止を強く求める。