<社説>米の国連人権理離脱 独善に日本は翻意促せ

 トランプ米政権の独善は、ここに極まれりと言えよう。国際社会の協調主義に背を向け、孤立化を深める態度は、決して認められない。大国としての責任放棄である。

 米国が国連人権理事会からの離脱を表明した。「イスラエルへの慢性的な偏見がある」というのが理由だ。
 人権理はイスラエルによるパレスチナ自治区ガザでの軍事作戦を非難する決議を繰り返し採択してきた。トランプ政権はこれを「北朝鮮やイラン、シリアを合わせたよりもイスラエルへの非難決議が多かった。政治的偏向に基づき行動している」と批判した。
 先月はパレスチナの抗議デモにイスラエル軍が実弾攻撃し、多数の死傷者が出た。もとはと言えば、米国が国際世論を無視してエルサレムをイスラエルの首都と認定し、大使館を移したことが原因だ。
 自分たちの主張が認められないから離脱するというのは利己的でしかない。
 米政権の国連組織からの離脱表明は、昨年10月の国連教育科学文化機関(ユネスコ)脱退決定以来だ。その際もイスラエルへの偏見を理由に挙げた。イスラエル一辺倒の政策が国際協調を乱している。
 トランプ政権は発足以来、地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」やイラン核合意、環太平洋連携協定(TPP)から離脱してきた。国際的な枠組みから外れて、米国第一主義、自国中心主義の誤った道を突き進んでいる。
 国内では、移民への不寛容政策や人工中絶支援団体への援助禁止、難民受け入れの制限など、人権を制限する政策を次々と打ち出してきた。トランプ氏の人権理批判は天に唾するようなものだ。
 欧州など各国が相次いで懸念を表明する中、日本は態度表明を避けている。菅義偉官房長官は「他国の対応について政府としてコメントすべきではない」と及び腰だ。またもや米国に物申せない日本の弱腰ぶりが露呈した。
 安倍晋三首相はトランプ氏との蜜月ぶりを誇るのなら、友人として厳しく忠告すべきだ。人権理への復帰を促すよう努力するのが務めだろう。
 人権理は人権委員会を格上げして、2006年に発足した。日本を含め理事国は47。国連加盟国の人権状況を監視し改善を促すのが使命だ。
 沖縄の基地問題でも何度か見解を表明している。昨年は沖縄など少数派の社会権保障を強化すべきだと日本に勧告した。名護市辺野古の新基地反対運動に政府が圧力を加えていることには、16年に特別報告者が懸念を表明した。
 あらゆる人権侵害を防ぐために、人権理が果たしてきた役割は大きい。米国も従来、民主主義の価値を訴え、人権擁護の旗振り役を務めてきた。大国が抜けることで取り組みが後退しかねない。
 組織に問題があるのなら、米国はとどまって内部改革をすればいい。日本も主導的にその役割を果たすべきだ。