<社説>自民改憲案反対5割 9条生かす発想が大切だ

 安倍晋三首相が秋の臨時国会に自民党改憲案の提出を目指す意向を示したことに対して国民は批判的だ。共同通信社が実施した全国電話世論調査によると、反対が49・0%と、賛成の36・7%を大きく上回った。

 首相は26日、9月20日投開票の自民党総裁選への立候補を正式に表明し、憲法改正の在り方を巡って石破茂元幹事長と論戦を交わす構えだ。
 9条を巡り首相は、戦力不保持と交戦権の否定を定めた1、2項を残し、別立ての9条2を新設して自衛隊保持を明記することを主張する。これに対し、石破氏は戦力不保持などを定めた2項を削除し、自衛隊を「戦力」と位置付ける全面改正が持論。一方で「9条は国民の理解を得て世に問うべきものだ」とも述べ、9条改憲は国民的議論どころか、理解すら得られていないという認識だ。世論調査の数字はそれを裏付けている。
 昨年5月3日に首相の提案を受けた自民党の憲法改正推進本部は今年3月、首相とほぼ同じ案を取りまとめた。共同通信の世論調査では、この案への反対が賛成を大きく上回る傾向が続いている。首相はこうした世論をどう受け止めているのだろうか。
 自衛隊保持の明記は憲法の平和主義の理念を具現化した9条の1、2項を空文化させると、憲法学者は指摘している。前文の決意も含めて日本国憲法の平和主義は単に自国の安全を他国に守ってもらうという消極的なものではない。平和構想を提示したり、国際的な紛争・対立の緩和に向けて提言したりして、平和を実現するために積極的な行動を起こすことを求めている。
 ところが、安倍政権はそれに逆行する行動を取り続けている。憲法解釈による集団的自衛権の行使容認や安保法制、「圧力と制裁」一辺倒の北朝鮮非核化、6年連続の防衛費拡大など枚挙にいとまがない。
 自民党改憲案は、国家権力の暴走を防ぐために憲法で国家を縛り付けるという考え方、いわゆる立憲主義に反する内容も目立つ。「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」と国民に憲法を守ることを強いる点などだ。
 日本国憲法の改定には国会議員3分の2以上の賛成と国民投票で過半数の賛成を得る必要がある。他国と比べても変えにくい仕組みだ。憲法制定権を持つ国民の意思を尊重する国民主権の考えが根底にある。主権者である国民の間から改憲に反対する意見が多くある以上、秋の国会で改憲を発議するのは暴走と言わざるを得ない。
 そもそも9条を変える必要は全くない。むしろ9条を生かす発想こそが大切である。防衛費を増やし、軍備を増強することで武力行使の「抑止」が働くとする「平和」は、日本国憲法が求める「平和」ではない。積極的な外交で紛争の火種を取り除き、なるべく軍備を減らせる環境をつくることを求めているのである。