内閣府は2019年度の概算要求で沖縄関係予算を3190億円に決定した。18年度当初予算比で180億円増だが、要求額は前年度と同額となった。安倍晋三首相が3千億円台の維持を確約して以降の概算要求としては、昨年に続いて最少額となった。
沖縄振興一括交付金は1253億円で、18年度当初予算比65億円増となり、4年ぶりに前年度当初予算より増額を求めた。しかし要求額は全体額と同様に前年度と同額だった。
沖縄振興一括交付金の要求額が前年度と同額だったことについて、知事職務執行代理者の富川盛武副知事は「自主的な選択に基づく沖縄振興の施策へ影響が生じかねず残念
だ」と述べている。当然だろう。
最終的な予算額は予算編成作業を経て12月末に閣議決定される。9月30日の県知事選挙の後だ。知事選は米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設の是非が最大の争点だ。当選者のこの問題に対する立場によって、予算の増減に影響があってはならない。
辺野古移設反対を公約に掲げて当選した翁長雄志氏の知事就任後の15年度は前年度より161億円減額された。16年度は前年度比10億円増となったが、17年度は前年度比200億円減となり、18年度はさらに140億円減額となっていた。
翁長県政後のこうした政府による予算額の減額傾向をみると、辺野古移設の政府方針に従わないことへの意趣返しとしか映らない。こうしたことから、政府が知事選の結果を予算額に反映させるのではないかと疑いの目を向けてしまう。
一方で北部振興事業(非公共)は前年度当初予算比9億円増の35億円となっている。12年度以降、25億円台で推移してきたが、ここにきて35億円まで増額された。今年2月の名護市長選挙で、辺野古移設阻止を掲げた現職が敗北し、自公が市政を奪還したことと無縁ではないだろう。政治色が強くにじんでいる。
しかし沖縄関係予算は辺野古移設とは無関係だ。沖縄の自立発展と豊かな住民生活を目指すのが沖縄振興策の基本方針だ。沖縄は27年間の米統治によって本土よりも戦後復興が遅れた。復帰と同時に施行された沖縄振興開発特別措置法に基づき、日本政府が沖縄関連の直轄事業や交付金をとりまとめてきた。
5次にわたる振興計画による内閣府の沖縄関係予算は、18年度までの総額で約11兆6800億円となっている。第5次の沖縄振興計画に当たる「21世紀ビジョン基本計画」は10年計画を折り返し、復帰50年以降の振興も視野に入ってきた。
政府は沖縄の自主性を尊重し、沖縄振興を念頭に置いて予算を編成すべきだ。政府の意向に従わせるためのアメとムチとして予算を利用することなどあってはならない。