<社説>陸自の砲弾誤射 危険な演習場は撤去せよ

 大惨事になりかねない極めて深刻な事故だ。民間地と近接した軍事演習場の危険性が改めて浮き彫りになった。

 滋賀県の陸上自衛隊饗庭野(あいばの)演習場で、訓練中に発射された81ミリ迫撃砲弾1発が目標から約1キロ北に離れた国道付近に落ち、さく裂するという誤射事故が起きた。
 国道脇に停車中の乗用車の窓が割れた。幸い、車内の男性にけがはなかったが、一歩間違えば人命が失われていた。「国民を守る」とうたう自衛隊が国民の命を危険にさらすことは、決してあってはならない。猛省を促したい。
 沖縄でも米軍演習場からの流弾事故が頻繁に起きている。民間地に弾が飛んでくる恐れのある危険な演習場は、米軍も含めて撤去すべきだ。
 誤射した砲弾は長さ約40センチ、重さ約4キロの「りゅう弾」だ。最長約5・6キロも飛び、地上付近でさく裂して周辺に金属片を飛び散らせ、数十メートルの範囲の人を殺傷する。
 誤射した部隊は発射地点から西約2・5キロ先の目標地域に向けて迫撃砲を試射した。1、2発目の音は聞こえたが、着弾場所は確認できなかった。この時点で発射の方角が北に22・5度ずれていたにもかかわらず、距離不足と判断して200メートル遠くに飛ぶように設定し3発目を誤射した。
 迫撃砲の射撃は4人一組で当たる。地形の測量、方角や角度の算出、迫撃砲の設定などの役割分担がある。4人とは別の隊員が安全確認をした上で発射する手順だ。
 陸自は複数の人的ミスが重なったとみている。全員が基本動作を怠ったとしか考えられない。人を殺傷する武器を扱う者として緊張感と責任感が欠如している。
 隊員が数人もいて、なぜ誰も気付かなかったのか。自衛隊では今月に入り、戦闘機同士の空中接触(長崎沖)や住宅にトラックが突っ込む(青森)など重大事故が相次いでいる。組織に緩みがないか、早急に再点検すべきだ。
 陸自は県警から通報を受けても約30分間砲撃を続け、迫撃砲を12発も発射していた。情報の分析力、判断力、機動力が低下していると批判されても仕方あるまい。
 地元の高島市への通報も遅かった。防衛省から市長に連絡が入ったのは2時間半以上も後だ。同演習場では2015年にも銃弾が演習場外の住宅の屋根を貫通する事故があり、市と陸自は速やかな通報を覚書で交わした。しかし、今回これが機能しなかった。
 沖縄でも米軍の事件・事故の際、自治体への通報の遅さが問題になる。危険と隣り合わせの生活を強いられている住民や自治体にとっては、一刻も早い情報提供が不可欠だ。
 岩屋毅防衛相は「国民の命を危険にさらす重大な事故だ」と述べた。同じ国民の命なら、自衛隊だけでなく米軍の事故に対しても政府を挙げて再発防止策に取り組むべきだ。軍事演習で住民の命が脅かされるのはたまったものではない。