渡嘉敷島、座間味島で外来種のイノシシが繁殖し家畜や農作物に深刻な被害を及ぼしている。ウミガメの卵を食い荒らした跡も確認された。このままでは国立公園の貴重な生態系が破壊されかねない。人身への被害も懸念される。
行政当局はイノシシの捕獲・駆除に本腰を入れて取り組むべきだ。
イノシシは十数年前に食肉用として渡嘉敷島に持ち込まれ、逃げ出して繁殖したとみられる。天敵がおらず生態系のトップに君臨していると専門家は指摘する。
一部は豚と交配しイノブタが出現した。イノシシの数倍、繁殖力が強いという。座間味島のイノシシは渡嘉敷島から泳いで渡ってきたらしい。
畑を荒らされる被害は後を絶たない。家畜のヤギも襲われた。国の天然記念物リュウキュウヤマガメの卵が食べられたという情報もある。
渡嘉敷村は2011年ごろから捕獲用のわなを仕掛けたり、田畑への侵入防止柵を設置したりして、本格的な対策に乗り出した。17年度までに664頭を捕獲したものの、依然として数百頭が生息しているとみられている。座間味島を含め、効果的な駆除方法が見つからず、対応に苦慮しているのが実情だ。
渡嘉敷、座間味両島を中心とする慶良間諸島と周囲の海域は14年に31番目の国立公園に指定された。優れた自然を守り、後世に伝えていかなければならない地域だ。
座間味村の屋嘉比島、慶留間島、阿嘉島などには国の天然記念物に指定されているケラマジカも生息している。
もとより人間によって連れてこられたイノシシに罪はない。かといってこのまま放置することはできない。
イノシシの分布が広がれば、被害は一層深刻化するだろう。本土では人を襲うケースが頻繁に起きている。渡嘉敷島でも人家近くでイノシシが目撃された。いずれ人身に危害を加えないか心配だ。そのような事態は何としても避けなければならない。
県は18年度からイノシシの現地調査を始めた。早ければ年内にはまとまる見通しだ。その結果を踏まえ、県と渡嘉敷、座間味両村が連携して駆除に向けた計画を策定するという。
県外では、駆除対策に工夫を凝らすことで一定の成果を上げている地域もあるようだ。県外自治体の事例も参考にしながら、当地の実情に即した対策を講じてほしい。まずは、イノシシの生態を知ることが不可欠だ。
イノシシはもともと食用として飼われていた。状況によっては、捕獲したイノシシの肉を資源化する可能性を含め検討する価値はあるだろう。
外来種が流入すると、そこに生息する動植物を食べたり、在来生物を追い払ったり、雑種を出現させたりする。生態系に及ぼす悪影響は甚大だ。そのことをよく肝に銘じたい。