「専守防衛」を逸脱しているとしか思えない。
新たな防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」と、大綱内容に沿って具体的な装備調達を進める次期中期防衛力整備計画(中期防、2019~23年度)のことだ。
護衛艦「いずも」を改修し事実上の空母化に乗り出すという。看過できない。
政府は、相手国に壊滅的な打撃を与える「攻撃的兵器」の保有を認めていない。憲法9条の下、「自衛のための必要最小限度」の範囲を超えるからだ。当然、攻撃型空母は保有できない。
この点について政府は「戦闘機を常時搭載する使い方はしない。多機能・多用途の護衛艦として運用され、専守防衛の範囲内」(岩屋毅防衛相)と説明した。詭弁(きべん)にしか聞こえない。運用の仕方によっては「攻撃型」に転じる可能性を否定できないからだ。
政府が「空母」の表現を避け、「多機能・多用途の護衛艦」と呼ぶのは、「全滅」を「玉砕」、「撤退」を「転進」と言い換えて情報を操作した大本営発表の手法を想起させる。
今後5年間の防衛費は27兆4700億円程度で過去最大だ。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」や最新鋭ステルス戦闘機F35など高額の新装備を購入することが出費を押し上げる。
高額な武器のほとんどは「対外有償軍事援助」(FMS)を利用して米国から購入される。これは米国の見積額に基づく前払いが特徴だ。「言い値」で買わされているという批判が根強い。FMSによる装備品調達額は14年度まで2千億円未満だったが、19年度予算の概算要求では過去最大の6917億円(契約ベース)にまで膨らんだ。
トランプ米大統領は11月末の日米首脳会談の際、記者団に対し「日本は『米国から数多くのF35を購入する』と約束してくれた。感謝を表したい」と述べ、水面下の協議の中身を暴露した。
浮かび上がってくるのは、武器商人のようなトランプ氏の要求に唯々諾々と従い、米国製武器を大量に購入する日本政府の姿だ。購入する兵器を「防衛装備品」と政府が呼んでいるのも、ごまかし以外の何物でもない。
そもそも、これほど多くの高額な武器を米国から購入する必要があるのか。
北朝鮮と米国は非核化に向けて交渉中だし、日中関係も一時期に比べると改善している。防衛大綱が、中国、北朝鮮の軍事行動を指して「安全保障上の強い懸念」、「重大かつ差し迫った脅威」とそれぞれ指摘しているのは、「防衛装備品」の購入を正当化するためではないのか。
防衛予算の不必要な拡大は財政を圧迫するだけでなく、周辺諸国に警戒感を抱かせる。メリットよりもデメリットの方が大きい。あらゆる兵器が無用の長物になるような国際社会を構築するために全力を挙げるべきだ。