基地あるがゆえの犯罪がまたしても発生した。
北谷町桑江のアパートで13日、男女の遺体が見つかり、県警は会社員女性が殺害された殺人事件とみている。容疑者は在沖米軍海兵隊第3海兵師団第3偵察大隊所属の米海軍3等兵曹である。容疑者は、犯行現場で自傷行為を繰り返し失血死している。
最悪の事態に至った事件の全容解明に向け米軍は、県警の捜査に全面的に協力し、全ての情報を包み隠さず提供すべきだ。
米軍の対応には数々の疑問がある。被害女性から相談を受けたにもかかわらず、容疑者を事実上、野放しにした。接近禁止命令を出したというが、実効性を伴っていない。
結果として殺人事件の発生を許した。米軍の対応の甘さが招いたともいえ、責任は重大である。
女性は、容疑者からつきまとい行為や乱暴、器物損壊など数々の被害を受けたことが判明している。米軍は具体的にどう対応を取っていたか。
事件後、エリック・スミス在沖米四軍調整官は、被害女性と容疑者とのトラブルについて、憲兵隊が「脅威はなくなった」と判断したことを明らかにしている。女性から「問題はなくなった」と連絡があったことが根拠だ。しかし女性の真意だったのか。再三の確認が必要ではなかったか。
被害女性は、刃物のようなもので刺殺されている。凶器が、その場にあったものか、事前に用意したものかも不明だ。衝動的だったのか、計画的だったのか。殺害行為の評価に関わる。凶器の入手先などの捜査も米軍の協力が欠かせない。
悔やまれるのは、被害女性が米軍に事前に相談し、県警も把握していたにもかかわらず、最悪の事態を避けられなかったことである。
女性は、米軍の通報に基づき県警の面談、聴取に応じているが、米憲兵隊に頼んでいるとして、警察の関与を断ったという。
トラブルの相手は日米地位協定で守られている米兵である。県警は積極的に関与すべきではなかったか。再発防止のためには、警察の対応にも反省すべき点がなかったか、検証する必要がある。
日米両政府による専門的な相談機関の設置を提案する専門家もいる。可能性を探るべきだろう。
米軍は、2月に米兵らの勤務時間外の行動を規制するリバティー制度を県などに通報することなく、緩和している。綱紀の緩みが事件の背景にあったことも否定できまい。
事件現場には女性の小学生の子どもが居合わせ、犯行を親族に伝えている。何よりも子の成長を願ったであろう母としての無念、犯行を親族に連絡した子どもの気持ちは察するにあまりある。
二度とこのような悲劇を起こしてはならない。実効性のある再発防止策を今度こそ米軍は示すべきだ。