<社説>韓国ホワイト国除外 対抗措置ではなく対話を


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 日韓両国の関係を一層悪化させる政府の決定に、重大な懸念を抱かざるを得ない。

 安全保障上の輸出管理で優遇措置を受ける「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正が閣議決定されたのである。半導体材料の輸出管理の厳格化に続く規制強化措置だ。
 これまで、軍事転用できる物資や技術を韓国に輸出する際、手続きの簡素化などの優遇措置が取られていた。ホワイト国から除外されると、輸出に際し、多くの品目で、軍事転用の恐れがあると判断された場合に国の許可を受ける必要がある。
 政府は「韓国当局とは貿易管理に必要な意見交換ができない状態で、信頼関係が損なわれた」と強調する。政府は否定するが、日本企業が賠償を命じられた元徴用工問題への対抗措置にしか映らない。
 強硬な姿勢を示すことで韓国の譲歩を引き出す狙いがあるのだとすれば、見込み違いだ。文在寅大統領は「外交的努力を拒否し、事態をさらに悪化させる非常に無謀な決定」と非難し、対抗措置を取る考えを表明した。
 両国関係が悪化した影響は既に民間交流にまで及んでいる。8月6~10日に豊見城市で予定されていた「日韓小学生ハンドボール親善交流大会」も韓国側の意向で中止になった。全国で草の根交流の中止が相次いでいる。
 半導体などの製造に必要な材料3品目の韓国向け輸出規制を強化してから、日本への反感が急速に強まっているという。国民一人一人の生活に影響しかねない事態になったからだ。政府の対応が問題を一層こじらせたと言えよう。
 河野太郎外相は元徴用工訴訟問題を巡って駐日韓国大使を外務省に呼んで抗議した際、「極めて無礼だ」と不快感を示した。外相こそ礼を欠いている。外交の責任者が感情的になっては、解決などおぼつかない。
 1965年の日韓請求権協定は、日本の韓国に対する経済協力として、当時のレートで約1080億円に当たる3億ドルを無償供与し、別に2億ドルの長期低利貸付を行うことを定めた。日韓両国とその国民の間の財産、権利、利益、請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決された」と確認されている。
 協定の解釈などに関する紛争は外交で解決し、解決しない場合は仲裁委員会の決定に服する取り決めだ。
 日本政府は協定によって解決済みとの立場である。そうであれば、協定に従い、正攻法で折衝を重ねるのが筋だろう。直接関わりのない貿易問題を絡めるべきではない。
 隣国同士の対立は双方にとって何のプラスにもならない。反目の先に待っているのは不幸な未来である。これまで民間レベルで積み重ねてきた交流の歴史にもくさびを打ち込みかねない。両国政府は冷静に対話の道を探ってほしい。対抗措置の応酬は憎悪を拡大させるだけだ。