1日から消費税が10%に引き上げられた。私たち国民は今回の増税が本当に必要だったのか、いま一度立ち止まって考える必要がある。
今回の増税の特徴を国民目線で端的に言うと、混乱と負担増だろう。
混乱は既に始まっている。軽減税率の導入やポイント還元制度があまりにも複雑なため、消費者だけでなく事業者にも理解が深まっていない。
軽減税率は、お酒や外食を除く飲食料品の税率を8%に据え置く制度だが、どこまで対象なるのか分かりにくい。
キャッシュレス決済によるポイント還元に至っては、軽減対象品目か否か、還元する店舗か否かで、3、5、6、8、10%の5種類の実質税率(小数点以下四捨五入)が存在する。複数の税率に対応せざるを得ない事業者の経理作業にも大きな負担となる。
経済産業省によると、還元制度を増税当初から導入する店舗は対象となる中小事業者の2割強にとどまる。申請手続きの不備や締め切りに間に合わないことなどが理由で、混乱ぶりがうかがえる。事業者でさえそうなのだから、消費者にとってはなおさらだ。より安価な商品の選択方法を巡り戸惑いが広がっている。
今回の増税は日常生活への打撃も大きい。軽減税率の対象にならない日用品や交通費、電気・水道料金など暮らしに直結する費目は軒並み値上げされる。特に低所得者層にとっては深刻だ。
9月11、12日に共同通信が実施した世論調査では、10%引き上げ後の経済が「不安」「ある程度不安」が計81・1%に上った。経済不安は消費控えを招く。実際に負担増を実感すれば経済は滞りかねない。県内各業界の8月の景況感が前月より4・6ポイント悪化したのも、増税対応への負担感と消費減少への懸念からだ。
そもそも消費税は低所得者ほど負担が大きくなる逆進性の側面がある。今回の増税も恩恵は高所得者層に厚いと指摘されている。軽減税率やポイント還元などの措置は、その場しのぎにすぎない。国民に広く負担を強いる今回の増税の根本には不公平感を増大させる税制の在り方がある。
消費税は1989年の導入以来、今年まで増税を重ねている。しかし所得税はその間50%から45%に減った。法人税も40%から23・2%まで段階的に減少した。その結果、国の2019年度予算の税収に占める消費税の割合は89年の6%から31%まで拡大した。
外国で消費税は付加価値税と呼ばれ、低所得者に配慮した軽減税率が欧米やアジア諸国で浸透している。韓国や台湾では食料品は非課税だ。
低所得者に負担をかけない仕組みが不可欠だ。所得税で高所得者の、法人税で高収益法人の課税率を上げる方法もある。今回の混乱や負担増の教訓を、税制の根本的在り方を巡る国民的議論につなげたい。消費税は増税ではなく減税へ方向を転換すべきだ。