共同巡回容認せず 根本策は基地負担の軽減


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 日本の警察権の遂行には、米国におもねる政府の弱腰が入り込む余地はないということだ。
 県警の村田隆本部長は、開会中の県議会11月定例会代表質問の答弁で、森本敏防衛相が提案している米軍憲兵隊との共同パトロールについて、「容認していない」と拒否する立場を明確にした。

 当然の判断だろう。共同巡回では、犯罪を犯した米兵の身柄を県警が現行犯で確保しても、結局は憲兵が米軍側に連れ帰る。警察としてそれが容認できるはずがない。これまでにも指摘してきたが、筋の通らない共同巡回など行ってはならない。
 村田本部長は、警察権を有しない米軍士官、上官による一般的な生活指導巡回(通称CP)との共同巡回についても問題視している。
 憲兵隊との巡回同様、身柄の措置でトラブルが起きる可能性があることや、米軍犯罪のみに対応するため既存の警察力が低下する恐れがあるとの理由だ。これもまた説得力がある。
 裏を返せば、森本防衛相の提案は、逮捕され日本側で取り調べられるべき米兵の身柄を、「はいどうぞ」と米軍に差し出し、警察力が低下しても米軍に協力せよというものだ。思いつきなのか否か定かではないが、防衛相の米国追従の姿勢は滑稽でさえある。
 米兵の犯罪防止には、巡回などせずとも、深夜外出禁止令などを順守させればいいだけだ。森本防衛相は、警察当局の判断を厳粛に受け止め、米国ではなく常に国民の側に立って物事を考えるよう努力してほしい。
 在沖米軍は米兵による事件防止対策として、基地内居住者を対象に、基地外でのアルコール購入と飲酒を禁止するほか、深夜から早朝の基地内のアルコール販売も禁止。飲酒後に基地と基地外住宅から外出することも禁止した。まるで酒が諸悪の根源とも受け取れるような対策であり、実効性には疑問が残る。
 米兵の犯罪を防止するには、まず沖縄を植民地視する米軍全体の認識を改めることから始めるべきだ。諸悪の根源は酒ではなく、沖縄への過重な基地負担であり、日米地位協定であることを肝に銘じてほしい。
 衆院選後の新政権が、米軍犯罪防止へどのような姿勢で臨むのか注目したい。米軍に擦り寄る、思慮の足りない対策で要らぬ混乱を招くような防衛相など論外だ。