強姦不逮捕8割 協定改定で対米交渉を


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 日米地位協定の抜本的な改定以外に、もはや解決策はないだろう。
 1996年以降に発生した殺人、強盗、放火、強姦(ごうかん)の凶悪犯罪の米兵被疑者118人のうち、逮捕せず身柄不拘束で事件処理されたのが約半数の58人で、強姦では米兵35人のうち30人と85・7%までもが不拘束だった。

 日米両政府は95年に凶悪犯罪については起訴前の身柄引き渡しに米軍が好意的考慮を払うとの運用改善に合意している。しかし実態は運用改善が事件処理で十分に反映されていないことが分かった。これでは何のための日米合意だろうか。
 そもそも好意的考慮などという米側の裁量でどうにでもなる曖昧な合意だから、こうした事態を生んでいるのだろう。少なくとも凶悪犯罪については、起訴前に身柄を日本側へ引き渡すことを義務付ける合意に改めるべきだ。
 今回明らかになった警察庁の統計資料では日本側が引き渡しを要求して米側が拒否したのか、日本側が引き渡しを要求しなかったのかなどの内訳は分からない。日本側が引き渡しを求めていない事例があれば大問題だろう。
 日本政府が身柄引き渡しを求めない際、「米軍が捜査に協力的」だという理由を挙げることが多い。しかし起訴前に身柄が引き渡されなかったことで捜査に支障を来した事例は何度も起きている。
 93年に発生した強姦事件では嘉手納基地内で禁足処分を受けていたはずの米兵が民間機で米国に逃亡していた。2003年に発生した複数の米海兵隊員による強盗致傷事件では禁足中の兵士が基地内で会っており、検察は公判で「口裏合わせをした可能性が強い。被告らが自由に通牒できる環境に置き、軍による自浄作用は全く期待できない」と批判した。
 それなのに起訴前の身柄引き渡しが少数にとどまっているのはなぜか。1953年の日米密約が今でも生きているのか。すなわち「(米兵の事件なら公務外でも)特に重要な事案以外、日本側は第一次裁判権を行使するつもりがない」との日米合同委非公開議事録の屈辱的な合意が今なお作用しているとしたら、即座に破棄する必要がある。
 運用改善では根本的な解決とならない。日本政府は自国の被害者の尊厳を守るために日米地位協定の抜本的な改定を米側に強く要求すべきだ。