対印原発輸出 再生エネルギーで貢献を


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 あまりにも経済優先でモラルを欠いたダブルスタンダード(二重基準)ではないか。安倍晋三首相は、インドのシン首相との間で、原発輸出を可能にする原子力協定の早期妥結で合意した。

 核兵器を保有するインドは、核拡散防止条約(NPT)に加盟していない。過去に核実験を行い、核弾頭搭載可能な弾道ミサイルの発射実験を繰り返してきた。同国への原発技術の供与は軍事転用などの核拡散につながる可能性が否定できない。
 北朝鮮には核放棄を求めながら、一方でインドにはなぜ寛容なのか。ダブルスタンダードに映る。
 日本は被爆国として、核廃絶を訴えてきた。ところが4月、その実行性に疑問符が付く出来事があった。70カ国以上の賛同を集めた「核兵器の人道的影響に関する共同声明」への賛同を見送ったからだ。理由は、米国の「核の傘」に依存する国策の否定につながりかねないというもので、自己矛盾もはなはだしい。
 今回、NPT未加盟のインドに原発を輸出すれば、日本の唱える核廃絶は、ますます説得力が乏しくなるだろう。
 国際原子力機関(IAEA)との包括的保障措置(査察)協定を結んでいないインドには、本来原発を輸出できない。しかし対印原発輸出を進める米国がインドを例外扱いにして、輸出を可能にしてしまった。安全より商売優先だ。
 国内では運転停止中の原発の再稼働を含め、原発新設に慎重なのに、海外への売り込みとなるとこうも違うのか。これもダブルスタンダードだ。安倍首相は何を根拠に世界一安全な原発と言っているのか。理由を明らかにしてほしい。トップセールスで積極的に原発を輸出することが、果たして成長戦略と呼べるのか疑問だ。
 福島第1原発事故から2年以上たってもなお、放射性物質に汚染された廃棄物や汚染水処理のめどは立たず、除染作業も続く。原発事故の教訓は、人間の手で原発を制御できない、というものだ。事故を機にドイツは脱原発へ政策転換した。
 英国の調査機関によると、風力や太陽光などの再生可能エネルギーは、大型水力発電を含めると、2030年には最大で世界の総発電量の37%を担う可能性があるという。日本は原発輸出を凍結して再生可能エネルギー分野で世界に貢献すべきではないか。