F15飛行再開 軍のおごり許されない


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 この判断は大きな過ちだ。米空軍は、嘉手納基地所属のF15戦闘機の訓練飛行を30日朝から再開した。28日の墜落事故からわずか2日。原因究明どころか、事故の詳細に関する説明や再発防止策も一切示されないままだ。

 県は「一歩間違えば人命、財産に関わる重大事故につながりかねない」(仲井真弘多知事)とし、原因が究明されるまでの訓練中止を強く求めていた。29日は自民党県連をはじめ県内政党の抗議行動が相次ぎ、市民集会も開かれた。
 米側は「嘉手納基地のF15全機の点検が終了したため」と訓練再開を説明するが、県民の切実な要望を歯牙にもかけないばかりか、反省のかけらも感じられない。
 飛行訓練の再開は、墜落の危険にさらされる住民感情を著しく逆撫(さかな)でする。もはや暴挙を通り越して、県民の人権などなきに等しいと宣告するようなものだ。これが民主主義国家を自認する米国の行動原理かとあきれるほかない。
 今回の墜落事故は、幸いにも海上だったため大惨事には至らず、パイロットも無事に脱出して救助された。米軍は機体に何らかの不具合が起こったとの認識を示したが、わずか1日の点検で同様な不具合が市街地上空で起こらないという保証ができるのか。深い疑念と同時に強い憤りを禁じ得ない。
 2007年11月に米ミズーリ州でF15が空中分解して墜落した際には、嘉手納基地を含め、少なくとも1カ月半近く、全てのF15の飛行停止措置が取られた。主要構造材に亀裂が見つかったためで、パイロットの緊急脱出もままならない重大な構造的欠陥だと米軍が判断したからにほかならない。
 県内での拙速すぎる飛行訓練再開とは対応に雲泥の差がある。軍の論理を優先するあまり、地域住民の生命・財産は二の次と考えているとしか思えない。こうした二重基準は直ちに廃すべきだ。
 日本政府の対応も理解に苦しむ。原因究明までの飛行停止を米側に求めることを、なぜためらうのだろうか。仮に墜落事故が自衛隊機であったとして、2日後の飛行再開を認めるだろうか。そもそも国民世論が許すはずがない。対米追従は今に始まったことではないが、主権国家と
しての主体性を著しく欠いている。
 原因究明を怠ったままの訓練再開は到底許されない。F15の飛行を即刻停止すべきだ。