嘉手納基地の周辺住民を悩ませている米軍機の爆音被害が深刻化することは避けられないだろう。
米国防総省は、最新鋭ステルス戦闘機F35が最短で2015年12月に配備可能となると発表した。「初期作戦能力(IOC)」を獲得するめどが立ったとしている。
空軍、海兵隊、海軍の3軍がそろって、F35を主力戦闘機の後継機と位置付けている。アジア太平洋重視を掲げる国防総省は、海兵隊仕様のF35Bを2017年に山口県の岩国基地に配備する計画を明らかにしている。空軍嘉手納基地への配備も検討している。
IOC獲得と連動した配備計画の本格化に伴い、空軍仕様のF35Aが、嘉手納の主力であるF15戦闘機の後継機となることが一気に現実味を帯びてきた。F35Bが海兵隊の普天間飛行場と嘉手納に飛来することもあり得る。
過去2次にわたる嘉手納基地爆音訴訟の判決は、離着陸する米軍機の騒音が忍耐の限度を超えているとして違法性を認めた。
基地騒音に対する県民の我慢はもはや限界だ。2万2千人を超える空前の規模の原告団が第3次訴訟を起こし、法廷闘争を強めていることがその証左だ。
F35はエンジン1基を搭載する単発機だが、推力が高いエンジンと吸入口の構造により、騒音が大きくなる。双発のF15よりも格段にうるさいとされている。
昨年6月、米軍準機関紙「星条旗」が、米本国のツーソン国際空港での環境評価を報じた。空軍仕様のF35Aが基地外にまき散らす騒音は、海軍のF16戦闘機に比べてはるかに大きいと評価された。
米国より人口密度が高い日本の基地、特に市街地と隣接する嘉手納基地などへのF35配備は、周辺住民の生活破壊に直結する。
米国内でもF35配備によって騒音が激化したことに対し、基地周辺住民が反発を強めている。フロリダ州内の住民は空軍を提訴し、騒音緩和措置を取り付けて和解している。米国民の声は反映されたが、嘉手納ではどうするのか。沖縄の住民に対しては、配備反対の声を無視する二重基準を押し通すのか。
軍事最優先の機種更新が推し進められれば、違法な騒音がさらに増幅する。日本政府は米軍に唯々諾々と従ってはならない。生活をかき乱される県民の懸念に向き合い、F35配備を許してはならない。