中国人民解放軍の戚建国副総参謀長が2日のアジア安全保障会議で、尖閣諸島や南シナ海における周辺国との領有権をめぐる争いを念頭に「(領有権問題の)棚上げを支持する」と表明した。
副総参謀長の立場上、中国政府の方針を踏まえたものだろう。習近平指導部と軍が穏健な解決策で一致していると見るのが自然だ。シグナルを正視し、日本政府も出口戦略の策定を急ぐべきだ。
注目すべきは、戚氏が棚上げ論を提起した☆(登の右に郊のツクリ)小平氏に触れ「主権や海洋権益をめぐる紛争で、当面解決できない場合は棚上げし、対話によって解決策を探るべきだ」と明確に主張したことだ。
戚氏の発言に対し、菅義偉官房長官は即座に「尖閣諸島に関する中国の主張は、いかなる発言も受け入れることはできない。尖閣諸島をめぐる解決すべき領有権問題はそもそも存在しない」と反論したが、反応がやや感情的ではないか。
昨年の尖閣国有化以来、日中は自国の立場を十分主張してきた。そろそろ非難応酬の段階から、問題解決へ踏みだす時ではないか。
尖閣問題で習近平共産党総書記は今年1月、山口那津男公明党代表に対し「対話と協議によって解決していく努力が重要」と述べた。
今年4月、琉球新報のインタビューに応じた程永華駐日中国大使も尖閣問題の平和的解決を強調し、「中日両国は戦略的互恵関係が本来の道だ」と関係正常化を訴えた。中国が沖縄に侵攻するという見方に対しては「沖縄に対して何かをするという意図は(中国側に)ない」と反論していた。
一方では、中国外務省の高官が「釣魚島の問題は中国の領土主権問題に関係している。当然、核心的利益に属する」と記者会見で明言。「核心的利益」とされたことで、習指導部が尖閣問題を国家の最重要課題に格上げしたとの観測も流れている。しかし、尖閣諸島は石垣市に属しており中国側の見解は認められない。
日中双方が領土ナショナリズムを沈静化し、尖閣問題を軟着陸させる知恵を絞ってもいいころだ。これまでも指摘してきたが、尖閣の領有権問題は根本的解決策が見つかるまで棚上げを再確認してはどうか。日本の実効支配を維持し、武力衝突回避策や日中共同資源開発など包括的なルールを新設する。尖閣の海を絶対に戦場にしてはならない。日中首脳が動く時だ。