大阪訓練移転案 本質から目を背けるな


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 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長と幹事長の松井一郎大阪府知事が、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの訓練の一部を大阪府内の八尾空港で受け入れる構想を提起している。

 維新の会の勢力が最も強い本拠地大阪での提起だが、唐突感と違和感を禁じ得ない。自らの政治基盤強化のために、沖縄の基地問題を利用しているのではないかという疑念がくすぶるからだ。
 八尾市の田中誠太市長は「危険性が非常に高い。まだ機体の安全性が確認されていない」と述べ、反対姿勢をはっきり示した。
 橋下氏は「沖縄の基地負担軽減のため、オスプレイの訓練くらい本州で受けないといけない。大阪の話を出さないのは無責任だ」と強調したが、「できるかどうかは分からない。政府にボールを投げる」と実現可能性には自ら疑問符を付けた。
 橋下氏は、在沖米海兵隊の風俗業活用を奨励する発言や、旧日本軍の「従軍慰安婦」を容認した発言に対する国内外の厳しい批判にさらされ、政治家としての資質が厳しく問われている。
 今回の提案は、参院選挙をにらみ、沖縄の基地問題に取り組む姿勢を見せることで、維新の党勢衰退の窮地を抜け出す足掛かりにしたいという政治的思惑が色濃い。沖縄の負担軽減とは別次元の狙いがあり、成算も見えない。腰が据わっていないように映る。
 橋下氏は、大型連休の初めに来県した際、政策協定を交わした政治団体「そうぞう」の下地幹郎代表から、オスプレイの訓練の一部を本州で引き受けてほしいと打診されたことがきっかけと説明している。
 それならば、なぜ、大阪での訓練受け入れを提起したのが1カ月以上も過ぎてからなのか。説明がつきにくい。
 本土への訓練移転といっても数日にとどまることは目に見えている。一年中、オスプレイが飛び交う沖縄にとって、配備中止ではない訓練移転は根本的解決には程遠い。問題の本質から目を背けないでほしい。
 橋下氏は大阪府知事時代、米軍機訓練の関西空港への移転受け入れを探る発言をしていた。沖縄の痛みを引き受ける姿勢に打算がないというなら、オスプレイ部隊ごと普天間飛行場を県外・国外に移すと主張するのが筋だろう。