参院選の前哨戦として注目された東京都議選は自民、公明両党の候補が全員当選した。自民は「小泉旋風」が吹き荒れた2001年選挙の53議席を上回る59議席と圧勝した。有権者が何に期待しているのか、傾向が見て取れる。
都議選では景気・雇用対策、医療・介護、教育や子育て支援策などの身近な課題に加え、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の是非や来春予定の消費税率8%への引き上げなど国政の課題にも関心が集まった。
このところの株価や為替の変動は激しい。市場の評価は揺れ動いているが、政権発足から半年の実績を強調した自民の圧勝は、政治の安定と景気回復に対する有権者の一定の支持の表れだろう。
選挙結果には有権者の期待と同時に懸念も垣間見える。原発の再稼働や海外輸出に前のめりとなる安倍晋三首相を批判し、憲法改正や増税反対姿勢を強調した共産党も議席を倍以上に増やした。
参院選に向けて、衆参両院で多数派が異なる「ねじれ」の解消を最優先に掲げる首相は昨年12月の再登板以来、持論とする国防軍の設置や集団的自衛権の行使容認といった保守色の強い発言は極力封印している。有権者は首相のタカ派的な主張に共鳴しているわけではなく、都議選の圧勝も野党側の力不足や自滅によるところが大きいことを、首相自身もよく理解しているのではないか。
民主党は都議会第1党から第4党へと議席を激減させた。政権運営に失敗した民主への有権者の不信は根深い。34人擁立した日本維新の会は2議席にとどまった。橋下徹共同代表は「惨敗」と総括したが、その最大の原因は在沖米軍の性風俗活用や「従軍慰安婦」問題などに関する自身の発言にある。
一方で日本維新と決別したみんなの党は議席を大きく伸ばしたが、全体的に見れば昨年12月の衆院選から続く「自民1強」の政治状況が反映された結果だ。野党側は参院選へどう態勢を立て直し、政権と政策論争を展開していくかが問われよう。
参院選沖縄選挙区では政権の経済政策や改憲問題に加え、最大の懸案である普天間飛行場の返還・移設問題をはじめ振興策、福祉・子育て支援、尖閣問題に絡んだ日台漁業協定など、争点が多い。明日の沖縄に向けた各政党や立候補予定者の論戦を注意深く見守り、大いに関心を寄せたい。