高級魚クロマグロが、このままでは庶民にとってますます高嶺(たかね)の花になってしまうかもしれない。
日米などの科学者や政府関係者でつくる国際機関「北太平洋まぐろ類国際科学委員会」が、太平洋のクロマグロについて漁獲量削減などの強力な資源回復策導入を勧告する報告書をまとめた。
関係国は年末に開かれる資源管理機関の「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」の総会で対策をまとめる。厳しい規制導入は避けられず、クロマグロの最大の漁獲国で最大の消費国である日本は当然、最大の責任を負うことになる。
漁獲過剰に伴うクロマグロ枯渇の危険性は以前から指摘されてきたことだ。各国は「漁獲量を2002~04年水準より増やさない。未成魚の漁獲を同水準より減らす」との暫定的な措置を決めているが、資源管理は進んでいない。それどころか日本の漁獲量は11年には前年比の1・5倍に増え、02~04年平均を超えてしまっている。
産卵に集まった魚や未成魚までを一網打尽にする巻き網漁の増加や、若いマグロをいけすで飼育する「蓄養」の普及などが影響しているといわれる。政府は実効性のある資源管理策の導入に向けて、業界を指導すべきだろう。
太平洋クロマグロについてWCPFCの委員会は1月、幼魚の漁獲量を02~04年水準より削減するとの規制が継続されれば、10年には2万3千トン弱と過去最低水準に落ち込んだ親魚の資源量が、30年には8万3千トンに回復する可能性があると公表している。だが予測通りに資源が回復したとしても、1950年代後半のピーク時の年間約13万トンにははるかに及ばない。
資源保護に関しては、陸上施設でクロマグロから採卵する技術を確立する取り組みも始まっている。乱獲の防止と併せて、養殖に関する研究開発も進める必要があろう。
クロマグロのほか、国際自然保護連合はミナミマグロやメバチマグロなども絶滅の危機にあると報告している。そのほかにもウナギをはじめ、資源の枯渇や減少が心配されている魚類は枚挙にいとまがない。
日本は11年で太平洋クロマグロ漁獲総量の実に75%を占めている。目先の利益にとらわれず、行政や漁業、流通などの関係者は資源管理に向けて真剣に取り組むべきだ。消費者にもその責任の一端があることを忘れてはならない。