教科書是正要求 文科省は指示を撤回せよ


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 八重山教科書選定をめぐり、国が県教育委員会に竹富町教委への是正要求を指示した問題で、県教委は要求に否定的な見解を示し、現時点で結論を出さず継続協議とすることを決めた。国地方係争処理委員会への不服申し立てはしないが、事実上の反対表明である。

 問題解決を妨げているのは竹富町でも県でもなく文部科学省の方だ。地方分権の精神に逆行し、教育現場を「どう喝」するような是正命令は直ちに撤回すべきだ。
 県教委は「子どもの教育環境を第一に考える」という視点で検討を進めた。「物事は信頼で解決することを子どもたちに見せたい」という言葉に、委員の高い見識がうかがえる。
 県教委の見解は三つある。まず無償措置法に違反しないと認識している。寄付によって竹富町の児童生徒に教科書が配布されているので「無償措置法の目的である義務教育の充実について大きな問題は生じていない」という見解だ。
 二つ目に、竹富町教委のみに是正要求をすれば、八重山地区で信頼に基づく公正な審議が行われなくなり、かえって混乱・停滞を招くと危惧している。
 三つ目に、是正要求は地方自治体の主体性に配慮することを求めた、地方分権一括法の付帯決議が反映されていないと指摘している。いずれの見解も説得力がある。
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「教員の地位に関する勧告」は教科書選択について教師に主要な役割を与えている。
 現行の市郡単位の採択方法は1997年、政府の行政改革委員会から改善を求められた。学校単位で自らの教育課程に合わせて採択する意義を重視し、将来的には学校単位の採択の実現に向けて検討するよう提言している。その場合、教師が重要な役割を果たす。
 規制改革推進のための3カ年計画(2009年3月閣議決定)も行革委の提言を踏襲している。こうした流れを受けて文科省は、教科書改革実行プランに市郡から市町村単位に教科書採択を柔軟化する方針を盛り込んだ。是正要求は文科省が示した同プランと矛盾している。
 県教委が竹富町教委に是正要求をしない場合、文科省が直接介入する可能性がある。力ずくで「信頼による解決」を放棄させるのは、子どもにとって最悪の「教育」だと知るべきだ。